現役世代の資産形成の手段として、人気を高めている投資信託の積み立て。クレジットカードで投信を購入することでポイントを獲得し、お得に積み立て投資ができる証券会社も増えている。今回は、お得度が高い証券会社5社のクレカ積み立てサービスについて解説する。
投信のクレカ積み立てにより、ポイント還元のメリットを得ながら資産づくりに取り組める。楽天証券、SBI証券、auカブコム証券、マネックス証券、tsumiki証券の5社のサービスについて、順に解説していこう。
楽天証券
「楽天カード」で投信の積み立てを行うと、最大1%の楽天ポイントが付与される。一般カードは年会費無料だ。月に5万円まで買い付け可能なので、毎月最大500ポイントが得られる。これまではどの投信を選んでも還元率は1%だったが、2022年9月買い付け分からは購入する投信によって還元率が0.2%に下がる仕様に変わった。
信託報酬(運用中に日々発生するコスト)のうち、販売会社が受け取る手数料(代行手数料)が年率0.4%(税込み)以上の投信は還元率1%(決済額100円につき1ポイント)、年率0.4%未満の投信は還元率0.2%(同500円につき1ポイント)となる。つまり、運用コストが低い投信だと還元率が下がってしまうのだ。
長期投資で定番のインデックス型投信など、低コストの投信は軒並み0.2%還元の対象なので、獲得ポイントは従来の5分の1に減ることになる。年間最大6000ポイントの獲得が可能だったのが、1200ポイントになると考えれば大きな差だ。
そこで検討したいのが、「楽天キャッシュ」による積み立てだ。楽天キャッシュとは、楽天グループのオンライン電子マネー。22年8月買い付け分から、この楽天キャッシュ決済による投信積み立てサービスが開始されている。こちらも月に最大5万円までの買い付けが可能だ。
楽天カードで楽天キャッシュにチャージすると、0.5%の楽天ポイントが付与される。これは、楽天カードの積み立てで低コスト投信を選択した場合の還元率0.2%を上回る。また、22年12月買い付け分までは、楽天キャッシュによる積立額の0.5%をポイント還元するキャンペーンも行われているので、還元率は計1%となる。これまで楽天カードで低コスト投信を積み立てていた人は、楽天キャッシュ決済への変更が得策だ。
ちなみに楽天キャッシュは、楽天カードでチャージする以外にもお得な入手方法が存在する。楽天キャッシュを受け取れるPOSAカードの「楽天ギフトカード」だ。例えばファミリーマートでは、スマホ決済のFamiPayで楽天ギフトカードが購入でき、購入額200円につきFamiPayボーナス1円相当を獲得できる。還元率は0.5%だ。「ファミマTカード」でFamiPayの残高にチャージすれば、クレカ側でも0.5%の還元(Tポイントを付与)が得られるので、合計の還元率は1%になる。
FamiPayで購入したこの楽天ギフトカードで楽天キャッシュを受け取り、投信積み立てに利用すれば、間接的に1%還元を得られることになる。楽天カードで楽天キャッシュにチャージした場合の0.5%を上回る還元率だ。12月買い付け分までのキャンペーンによる0.5%を加えれば、1.5%還元となる。
また楽天証券を利用していると、楽天市場のSPU(スーパーポイントアッププログラム)で買い物がよりお得になる点も見逃せない。楽天証券と楽天銀行を連係する「マネーブリッジ」を設定したうえで、月3万円以上の投信を買い付け、その購入代金として楽天ポイントを一部でも充当すると、当月の楽天市場での還元率が0.5%アップする仕組みだ。投信の購入時に1ポイントでも利用すればSPUの対象になるので、楽天カードか楽天キャッシュでの積立設定時にポイント利用設定を併せてやっておけば、容易に達成できるだろう。
SBI証券では三井住友カード ゴールド(NL)がお薦め
SBI証券
三井住友カード発行のクレカで投信積み立てをすると、最大2%のVポイントが得られる。月に5万円までの積み立てが可能だ。還元率は対象カードによって異なり、基本的にはプラチナカードが2%、ゴールドカードが1%、その他のカードは0.5%となっている。三井住友カードが発行していても、Vポイントではない独自ポイントがたまるクレカは対象外なので注意しよう。
還元率が高い上級カードは年会費も高いので、クレカ積み立ての還元率アップだけを目当てにプラチナカードを発行するのは割に合わないだろう。お薦めは、積み立ての還元率が1%の「三井住友カード ゴールド(NL)」。毎月最大500ポイントを得られる。
三井住友カード ゴールド(NL)は年会費5500円(税込み)がかかるが、年100万円以上の利用を1度達成すると、次年度以降は年会費が永年無料になる。また、年100万円以上の利用で1万ポイントのボーナス特典もあり、通常の還元率0.5%と合わせて実質還元率を最大1.5%に高められる。
ただし、同カードの年会費永年無料やボーナス特典の条件となる利用額については、投信積み立て分はカウント対象に含まれないので注意が要る。いずれも、積み立て分を除いて年100万円以上の利用が必要だ。買い物や食事、公共料金の支払いなど日常的に使うカードとして月平均8万4000円程度の利用が見込めるなら、保有を前向きに検討する価値があるだろう。
獲得したVポイントは、クレカの請求額にキャッシュバックとして1ポイント=1円で充当できるため、無駄なく使いやすいのがいい点だ。
auカブコム証券
「au PAYカード」で投信を積み立てると、1%のPontaポイントが得られる。月に5万円までの積み立てが可能だ。au PAYカードは年1回以上の利用があれば年会費が実質無料で持てるので、クレカ積み立てをしていれば条件をクリアできる。
auカブコム証券とau PAYカードの組み合わせは、特に条件なく1%の高還元を受けられるのがメリット。毎月最大500ポイントを得られる。
獲得したPontaポイントは、ローソンの対象商品が割安に買える「お試し引換券」に交換したり、ネット通販のau PAYマーケット限定ポイントに1.5倍のレートで交換(auスマートパスプレミアム会員限定)したりできるなど、ポイントの価値を高めやすいのが魅力だ。
マネックス証券×マネックスカードで1.1%還元
マネックス証券
「マネックスカード」で投信積み立てを行うと、1.1%のマネックスポイントが付与される。月に5万円まで積み立てが可能で、毎月最大550ポイントが得られる。
マネックスカードは年1回以上の利用で年会費が実質無料になるため、投信積み立ての設定さえしていれば年会費がかかる心配はない。通常還元率は1%だが、積み立てで利用する場合には還元率が少しアップする。
年会費を無料にできるクレカでの積み立てで、還元率1.1%はトップ。また、マネックスポイントは共通ポイントのdポイントやTポイント、Pontaポイントなどに手数料無料で交換でき、使い勝手にも優れている。
tsumiki証券
「エポスカード」(年会費無料)で投信積み立てができる。同カードの通常還元率は0.5%だが、クレカ積み立ての還元率は積立継続期間によって異なり、1年目は0.1%、2年目は0.2%と毎年0.1%ずつ上昇し、5年目以降は上限の0.5%となる。月に5万円まで積み立て可能。ポイント還元は年間積立額に応じて年1回行われる仕組みで、還元率が0.5%なら年最大3000ポイント(月最大250ポイント相当)が得られる。
エポスカードの投信積み立てには、還元率だけでは計れない魅力がある。エポスカードは利用実績によって「エポスゴールドカード」へのインビテーション(招待)が届く仕組みがあり、招待を受けてからゴールドカードにアップグレードすると、通常5000円(税込み)かかる年会費が無料になる。tsumiki証券でのクレカ積み立てもこの利用実績に含まれると言われており、インビテーションを受ける近道になるのだ。
さらに、エポスゴールドカードは保有後にもメリットがある。年間利用額に応じたボーナスポイントの特典があり、年50万円以上の利用で2500ポイント、年100万円以上の利用なら1万ポイントが得られる。クレカ積み立ても、この年間利用額のカウント対象になる。
月に5万円積み立てている場合は、それだけで年60万円。あとは通常のカード利用が年40万円あれば合計100万円に達し、1万ポイントを受け取れる。100万円ちょうどなら、1%の上乗せ還元だ。積み立て5年目以降の0.5%に、ボーナスポイントの最大1%を加味すると、tsumiki証券のクレカ積み立ての還元率は最大1.5%とも計算できる。
得られるエポスポイントは、商品券やギフト券、航空マイルに交換できるなど用途が幅広い。中でも、800ポイントで1000円分に交換可能なモンテローザの食事券は、コスパに優れた利用先だ。
tsumiki証券のクレカ積み立ての弱点は、購入する投信の選択肢が5つしかないこと。楽天証券やSBI証券、auカブコム証券、マネックス証券はいずれも1000本以上の投信から積み立てる商品を選べるが、tsumiki証券では5本だけ。投資初心者でも悩まないように厳選したラインアップになっているようだが、投信の信託報酬はインデックス型投信に比べるとどれも高め。使いこなすには、やや癖がある証券会社といえる。
以上、お得なクレカ積み立てについて解説してきた。還元率の高さでは、マネックス証券かauカブコム証券がまずは候補。楽天市場で買い物をよくする人なら、楽天証券の相性がいい。ゴールドカードをうまく活用できる人であれば、SBI証券かtsumiki証券がお薦めとなるだろう。
そして、今回取り上げた証券会社とクレカについて、口座開設やカードの新規発行をする場合には、ポイントサイトの案件を利用できないか確認しておきたい。どちらの案件も、付与ポイントが高額になりやすいからだ。そのポイント獲得も考慮して、総合的にお得な組み合わせを選ぶのがいい手だ。
(画像は各サービスのサイトから)

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