和食とのマッチングを究めたクラフトビールの新星「馨和 KAGUA」、深みのある味わいで世界的コンペで金賞を獲得した「スタウト」。ネクストブレイク必至の2商品の開発背景と、それらを生んだ気鋭ブルワリーの次の一手を探る。
※日経トレンディ2021年3月号の記事を再構成
果物やスパイスなどの原材料を使い、独特な香りや味わいを目指すクラフトビールが増えている。特にユニークなのが、「和食とのベストマッチ」をうたうクラフトビール。飲まれるシーンを大胆に絞った、Far Yeast Brewingの「馨和 KAGUA」だ。
使っているのは、和のハーブともいえるユズと山椒。ユズのフレッシュな香りが魅力の「Blanc」と、山椒がスパイシーで爽やかな後味を引き立たせる「Rouge」の2種類がある。馨和を醸造している場所はベルギーだが、ユズと山椒は国内の指定産地から直接購入したものを使う。
アルコール度数はあえて8〜9%と高めに。Far Yeast Brewing代表の山田司朗氏は、「食事をビールで流し込むのではなく、食事を味わいながらゆっくりと飲めるように」と説明する。炭酸は食事の味わいを邪魔しないように、瓶内二次発酵による低炭酸に仕上げている。和食といえば、日本酒か焼酎か。ビールは飲むとしても1杯目だけで、2杯目以降は別の酒に。馨和はそんな定番コースまで変えそうだ。
馨和の発売に至るヒントになったのが、インド系英国人のカラン・ビリモリア氏が創業し、89年に英国で誕生した「コブラ」ビール。英国ではインドカレーの人気が高いのに、大手メーカーの苦みや炭酸が強いビールは相性が悪かった。そこで、おなかにたまりにくく、洗練された味わいのビールを目指して造られた。「和食も海外でも人気なのに、看板として親しまれるクラフトビールが無い」(山田氏)という気付きから生まれたのが、馨和なのだ。
和の料亭などで飲まれることへの狙いが表れた、もう一つの要素はラベルだ。色は、「日本の伝統色である胡粉色と茜色を採用した」(山田氏)。紋印を模した馨和のロゴマークを中央に配置。余計な情報をそいだ、シンプルなデザインにしている。
同社は、広いシーンで飲まれるようにと造られたゴールデンエール「東京ブロンド」など、「Far Yeast」の名を冠したブランドも展開。さらに今注目なのが、新ブランドの「Off Trail」(記事冒頭の写真)だ。現代のような醸造設備が無い時代のビール造りの手法を取り入れるとのコンセプトで、木樽で熟成する「バレルエイジング」に着手。「様々な微生物の働きで、発酵や熟成で発生する複雑な香りを取り入れ、時にはビールの香味バランスを損なうといわれる成分・オフフレーバーもあえて受け入れる。複雑で再現できない味わいが魅力」(山田氏)。バレルエイジングを含む様々なビールの酒質を安定させるため、微生物検査装置も導入して力を入れる。
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