2019年にブレイクした「ハンディファン」の進化系が早くも出ている。首にかけるタイプで、両手をふさがずに顔付近に風を当てることができる。また、従来は屋外で働く人に重宝されていた「ファン付きウエア」も、アシックスやAOKIなどが参入して市場が活性化している。

※日経トレンディ2020年9月号の記事を再構成

進化したファン付きウエア 街着としても違和感なし

 腰部の両サイドに小型扇風機を搭載する上着で、建築現場などで普及してきたファン付きウエアだが、今夏は一般向けの商品が一気に増え、街角で目にする機会も増えそうだ。話題を集めている筆頭格が、アシックスの「AIR CONDITION WEAR」。ファン付きウエアの草分けであるセフト研究所とタッグを組んで開発し、7月に発売した。もともと、今夏開催予定だった東京五輪・パラリンピックで、アスリートや観戦者が使えるように企画されたもので、スポーティーな見た目で街着としても違和感なく着用できる。スイッチを入れてファンを回すと、風が首元や両袖から心地よく抜け、汗が気化することで涼感が得られることを確認できた。ファン付きウエアは、ミズノやデサントも製品を投入しており、今後、スポーツメーカー間の競争が激しくなることが予想される。

冷却ウエア1/スポーティーなファン付きウエア

AIR CONDITION WEAR(アシックス)

フード付きのスポーティーなデザイン。腰部の両サイドにファンを搭載している
フード付きのスポーティーなデザイン。腰部の両サイドにファンを搭載している
襟の内側の調整ひもにより首元に風の通り道ができる。前身頃のスリットから入れた手のひらも冷やせる。ドローコードで裾を締めて気流を下から逃がさない。●価格/2万9700円(税込み)●本体サイズ/S、M、L、XL、2XLの5サイズ●重さ/750グラム※Lサイズの場合、電池含む(編集部調べ)●電源/単3乾電池4本(連続使用時間/16時間※弱モードの場合)
襟の内側の調整ひもにより首元に風の通り道ができる。前身頃のスリットから入れた手のひらも冷やせる。ドローコードで裾を締めて気流を下から逃がさない。●価格/2万9700円(税込み)●本体サイズ/S、M、L、XL、2XLの5サイズ●重さ/750グラム※Lサイズの場合、電池含む(編集部調べ)●電源/単3乾電池4本(連続使用時間/16時間※弱モードの場合)
着けてみた!
袖と首元から風が抜け、両脇、両腕、首が常に涼しい。風を強にしても(写真)、膨らみは目立ちにくかった。駆動中、スリットから手を衣服内に入れると風が当たり、手汗が軽減。手を冷やすと体全体が涼しく感じる効果も得られる。

 19年、ファン付きベストで新規参入を果たした紳士服大手のAOKIは、今年、リニューアルしたタイプを投入。改善点は、ファンを薄型に変更することによって、強モードで使っても衣服が膨らみにくくなり、見た目の違和感を極力抑えたことだ。「これによって、プライベートやビジネスでもより着やすくなった」(AOKI)。EC、実店舗で販売し、売れ行きは昨年比1.4倍と好調に推移している。

冷却ウエア2/普段の生活やビジネスに使えると実感

クーラーベスト(AOKI)

ベストタイプのファン付きウエア。AOKIもアシックスと同様にセフト研究所と共同開発した
ベストタイプのファン付きウエア。AOKIもアシックスと同様にセフト研究所と共同開発した
外側のポケットにリモコンを入れ、操作できて便利。●価格/1万7490円(税込み)●本体サイズ/M~L用、 LL~XL用の2サイズ●重さ/540g※M~L用の場合●電源/外付けリチウムイオン電池(連続使用時間/20時間※弱モードの場合)
外側のポケットにリモコンを入れ、操作できて便利。●価格/1万7490円(税込み)●本体サイズ/M~L用、 LL~XL用の2サイズ●重さ/540g※M~L用の場合●電源/外付けリチウムイオン電池(連続使用時間/20時間※弱モードの場合)
着けてみた!
強モードにしても(写真)衣服はさほど膨らまず、大量の風が体の前後を通り、首回りから抜けて実に爽快。31度の中で歩き続けても、胸や背中、首元は少し汗ばむ程度だった。普段の生活やビジネスに使えると実感。

 アイリスオーヤマは今年から参入し、コスパに優れる1万円程度の「クールウェア」を展開。大容量バッテリーを採用し、風力が強く、連続使用時間が長いことがポイントだ。家電メーカーとしての本領を発揮し、ファンもバッテリーも自社開発した。バッテリーの容量をより増やし、背中部分の内側に首元に向けて風が通り抜けやすい構造を取り入れるなど高機能化した「クールウェアPRO」も同時に展開し、幅広いニーズに対応する戦略だ。

 腰のベルト部分に装着して使う、外付けの「腰ファン」タイプも登場している。Tシャツ、パーカーなどと一緒に用いて、あらゆる上着を“即席のファン付きウエア”に仕立てられるのが特徴。

冷却ウエア3/コスパが魅力のスタンダードモデル

クールウェア(アイリスオーヤマ)

高機能な上位モデル「クールウェアPRO」(税込み1万6940円)も展開
高機能な上位モデル「クールウェアPRO」(税込み1万6940円)も展開
風量が強く電池の持ちも良い。1万円台前半のコスパは魅力。バッテリー兼リモコンは操作後内ポケットに収納できる。●価格/1万1880円(税込み)●本体サイズ/M、L、LLの3サイズ●重さ/674グラム●電源/外付けリチウムイオン電池(連続稼働時間/30時間※弱モード(風量1)の場合)
風量が強く電池の持ちも良い。1万円台前半のコスパは魅力。バッテリー兼リモコンは操作後内ポケットに収納できる。●価格/1万1880円(税込み)●本体サイズ/M、L、LLの3サイズ●重さ/674グラム●電源/外付けリチウムイオン電池(連続稼働時間/30時間※弱モード(風量1)の場合)
着けてみた!
風が強モード(風量4)の場合(写真)、今回試したファン付きウエアの中では、最も風力が強く、首元を風が抜ける際には風音がはっきり聞こえるほどだった。ただ、衣服は大きく膨らみやや目立つ。園芸やアウトドアには向く。

 例えば、ウエストバックタイプの「野電 ボディエアコン・クールユニット」(ロゴスコーポレーション)、「ハンズフリー2Wayファン『腰ベルトファン2』」(サンコー)などがある。だが両者共に、ファン付きウエアに比べると風量は小さめで、風が流れる箇所が限定的で、涼感では劣る。

腰ファン1/斬新な扇風機付きウエストポーチ

野電 ボディエアコン・クールユニット(ロゴスコーポレーション)

小型ファンを搭載。腰に着けて駆動させると、本体の両側に設けられた複数の穴から衣服内に向けて送風される構造(左)。スイッチが本体に埋め込まれたユニークなデザイン。長押しで稼働する(右)。●価格/1万890円(税込み)●本体サイズ/高さ10センチ×幅32センチ×奥行13センチ(ウエストサイズ:85~120センチ)※Lサイズの場合●重さ/305グラム※Lサイズの場合●電源/別売り外付けモバイル電池(連続使用時間/10000mAhで58時間※弱モードの場合)
小型ファンを搭載。腰に着けて駆動させると、本体の両側に設けられた複数の穴から衣服内に向けて送風される構造(左)。スイッチが本体に埋め込まれたユニークなデザイン。長押しで稼働する(右)。●価格/1万890円(税込み)●本体サイズ/高さ10センチ×幅32センチ×奥行13センチ(ウエストサイズ:85~120センチ)※Lサイズの場合●重さ/305グラム※Lサイズの場合●電源/別売り外付けモバイル電池(連続使用時間/10000mAhで58時間※弱モードの場合)
着けてみた!
強モードでも本体両側にある複数の送風口から柔らかい風が吹き出してくる程度で、ファン付きウエアのような大風量が起こるわけではない。腹部から脇にかけて涼しさを感じる。強い風が苦手な人には向いている。

腰ファン2/上半身の一部を限定的に涼しくできる

ハンズフリー2WAYファン「腰ベルトファン2」(サンコー)

上部の送風口から風が出てくる。小さい筐体でありながら、強モードの風量は意外と強い。3000円以下という価格も魅力。腰のベルト部に着け、シャツをフックに引っ掛け、吸気口を外に出す。●価格/2980円(税込み)●本体サイズ/高さ10センチ×幅7.5センチ×奥行4.5センチ●重さ/168グラム●電源/内蔵リチウムポリマ―電池(連続使用時間/15時間※弱モードの場合)
上部の送風口から風が出てくる。小さい筐体でありながら、強モードの風量は意外と強い。3000円以下という価格も魅力。腰のベルト部に着け、シャツをフックに引っ掛け、吸気口を外に出す。●価格/2980円(税込み)●本体サイズ/高さ10センチ×幅7.5センチ×奥行4.5センチ●重さ/168グラム●電源/内蔵リチウムポリマ―電池(連続使用時間/15時間※弱モードの場合)
着けてみた!
腰に着けて強モードで稼働させると、背中の一部ではあるが、強い風を送ることができた。ファン付きウエアのように上半身全体に風を送ることはできないが、好きな場所に着けて任意の部位を涼しくする用途では使える。

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