2020年、大きな注目を集めているのが、「ペルチェ素子」を使ったウエアラブルな冷却ギアだ。ソニーが2019年にクラウドファンディングで成功して、この夏に量産化にこぎつけた。そこに、富士通ゼネラルも業務用で参戦し、激戦区となっている。こうした新商品が猛暑対策にどのように役立つのか。その実力を検証してみた。
※日経トレンディ2020年9月号の記事を再構成
昨夏、爆発的ヒットとなった、ハンディファン。「フレ 2WAY ハンディファン」(フランフラン)が前年比800%の売れ行きとなるなど、スマートフォンと共に持ち歩く、第2の定番アイテムになるほどの勢いを見せた。ただし、ハンディファンは持って使うため、片手が塞がるのがネック。スマホを手放せない人にとっては、両方の手が占有されてしまうことになる。そこで2020はそうした悩みの種を解消し、手で持つ必要のない“脱ハンディ”のウエアラブル冷却ギアが各社から続々と登場し、話題をさらっている。猛暑対策の新ジャンルとして市場拡大は必至の様相だ。
大本命は「ペルチェ素子」ギア
特に注目を集めているのが、「ペルチェ素子」という電子部品を使い、首回りに装着することで、冷感を得られる“ウエアラブルクーラー”だ。ペルチェ素子とは、電気を流すと片側が吸熱して冷たくなり、反対側が発熱して温かくなる性質を持った半導体素子のこと。金属板などを介して、冷たくなる面が肌に当たるように装着することによって、冷却効果が得られる。従来、車載小型冷蔵庫、半導体レーザーの光源の温度管理などに使われてきた。それを、冷やすと全身の汗が引きやすくなる首回りに使う小型クーラーとして各社が開発し、商品化ラッシュが勃発。2020年夏の本命アイテムとなっている。
中でも、ビジネスパーソンにとって真夏の救世主となり得るのが、7月1日にソニーが発売した「レオンポケット」だ。スマホよりひと回り小さい薄型デバイスを、専用シャツの背中上部にあるポケットに入れ、ペルチェ素子を使った冷却部位が首元にピタッと付くように装着。スマホアプリでデバイスのオン・オフや冷たさの強弱を操作する。実際、気温31℃の暑い中で着けてみると、強い冷却感を首の付け根に感じ、汗が引いていくのを実感。10分間着けて歩き続けても、冷感は持続し、発汗が抑えられることに驚いた。
最大のメリットは、上からワイシャツを着用すると、本体が見えなくなることだ。「ビジネスパーソンは、外から見えるギアを使うことに抵抗がある。衣服の中に入れることが、最もこだわったポイント」(ソニー)。筆者は外出先で試したが、静音設計のため、スイッチを入れても周囲はおろか同行者にもその存在を察知されることはなかった。
冷たさは4段階に自分で切り替えられる他、加速度センサーによって、冷却度が歩き始めてから徐々に強まり、立ち止まると最大になるオートモードも選べる。通勤時、家を出てから駅に着くまでに使うと便利だ。こうして現実の使用シーンを想定し、ソフトウエアを緻密に作り込む姿勢にも好感が持てる。初回出荷分は即完売するほど人気が沸騰し、「予想をはるかに上回る売れ行き」(ソニー)。盛夏に向けて勢いは加速しそうだ。
首回りクーラー1/外から見えない衣服内冷却デバイス
レオンポケット(ソニー)
- 価格/1万4300円(税込み)※専用インナーウェア:1980円(税込み)
- 本体サイズ:高さ2センチ×幅5.4センチ×奥行11.6センチ
- 重さ:89グラム
- 電源:内蔵リチウムイオン電池(連続使用時間:4時間※弱(レベル1)モードの場合)

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