新型コロナ対策のため、国民の大半がマスクを着けざるを得ない前代未聞の夏を迎える。そのなかで快適に着用できるように工夫されたマスクが続々登場している。こうした夏マスク12製品を2回にわたってテスト。前編ではユニクロの「エアリズムマスク」、ミズノ「マウスカバー」など、売り切れ続出の人気商品の使用感をチェックした。
※日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成

気象庁も「平年より気温が高い」と予測する2020年の夏。懸念点は、真夏の高温・多湿の中でマスクを着けると、内側に熱がこもり、汗をかいて不快なことだ。帝京大学高度救命救急センターの三宅康史教授は、「マスクをすると、呼吸による体の冷却効果が得難くなり、熱中症のリスクが高まる可能性がある」と警鐘を鳴らす。マスクの生地自体が顔の熱で温められる上、吐いた温かい息が滞留しがちなためだ。さらにマスクで息がしづらいことで、呼吸時に動かす横隔膜と肋間筋に負荷がかかり、それらの筋肉が体内で余計に熱を発生させてしまう。
3月以降、シャープなどの異業種が不織布マスクの製造に参入した。そこへ、大手アパレルやスポーツメーカーなどが独自の素材を使った布マスクを引っ提げ、相次ぎ参戦。後者には、暑さや息苦しさを軽減するとうたう夏向きマスクが多く、こちらも売れている。
スポーツメーカーのミズノが水着や陸上ウエア用のストレッチ素材で作ったのが、「マウスカバー」「『アイスタッチ』マウスカバー」だ。5月20日にネット販売すると、初回の2万枚が即日完売、第2弾はアクセスが集中してサーバーが落ち、6月中旬過ぎにようやく再開にこぎ着けた。6月中に、マウスカバー87万枚、「アイスタッチ」マウスカバー70万枚の抽選販売の受け付けをECサイトで行い、申し込みがこれを大幅に上回るようであれば、追加増産も検討するという。
アパレルでは、無印良品(良品計画)が、生産時に余る残布を有効活用した「繰り返し使える2枚組・マスク」を発売。オーガニックコットンなどの夏に向く素材で作られている。3種類あるうち、6月5日発売の「サッカー織り」タイプは初回入荷分は早々に売り切れた。さらにユニクロが、汗に強い独自素材で作られた「エアリズムマスク」を6月19日に発売。ユニクロはこれを夏向きのマスクとはうたっていないものの、初日に全国の店舗で開店前から長蛇の列ができ、売り切れ店が続出した。
編集部では、こうしたマスクを実際に入手・装着して試してみた。夏にマスクを着ける際の不満を取材や各種アンケートから考察し、「熱がこもらない」「蒸れにくい」「肌触りがいい」「適度なフィット感」「耳ひもで痛くならない」の5つの観点に注目。一定時間着け続けた感想を記す。なお、サンプルは1枚ずつしか入手できなかったため、筆者の個人的な印象になる。今回は、スポーツメーカーやアパレルメーカーが開発した、以下のマスクの着け心地を紹介する
- マウスカバー(ミズノ)
- 「アイスタッチ」 マウスカバー(ミズノ)
- スポーツフェイス マスク(ヨネックス)
- エアリズムマスク(ユニクロ)
- 繰り返し 使える2枚組・マスク(良品計画)
- TioTioプレミアム 洗える立体マスク(青山商事)
- ダブル抗菌・洗える クールマスク(AOKI)
問題となるマスク内の熱のこもり具合は、マスクの形状によっても軽減できる。マスク内の口の前に僅かな空間があって、頬に生地が隙間なく密着する形になっていると、吐いた息が口先から素早く外に排出され、マスク内で広がりにくい。本体と耳ひもを一体化したデザインにすればその形状のマスクを作りやすい。 この点で優秀なのは、ミズノのマウスカバーシリーズの2品だ。熱がこもりにくく、伸縮性に優れた肌への密着度が高い素材を使用。不織布マスクより通気性が良く、息がしやすい。
伸縮性、通気性の良い水着素材
マウスカバー(ミズノ)

熱や蒸れを放出する独自素材
「アイスタッチ」マウスカバー(ミズノ)

汗などで「蒸れにくい」かどうかも快適さに影響する。ここでは、乾きやすさを表す「速乾性」が一つの目安になる。前出の「アイスタッチ」マスクカバーは、内側の接触涼感素材が汗を素早く吸って乾かすというのが売りだ。ヨネックスの「スポーツフェイスマスク」は、吸汗速乾性のある生地にキシリトールを配合し、汗に反応して熱を吸収する涼感性を兼ね備えるとうたう。バドミントン日本代表のユニフォームにも使われており、汗や蒸れに強いマスクと言える。
速乾性の違いを見るため編集部ではマスクを水に浸し、3分後の乾き方の差を確認してみたところ、「アイスタッチ」マスクカバーと、スポーツフェイスマスクは3分後に3割ほど水分が減少していた。実際、暑い日に外で着け続けても、汗でべとつくことが比較的少なかった。
蒸れ軽減と涼感を両立
スポーツフェイスマスク(ヨネックス)
