シェフならではの「体験設計」が肝 好調スイーツD2Cの学び(画像)

“人生最高のチーズケーキ”と称される「Mr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)」を率いる田村浩二氏に聞く、with&アフターコロナ時代の外食産業の後編。「今だからこそ、旧来のレストランの風習から抜け出すチャンス」と語る、その真意とは?(聞き手はシグマクシス福世明子氏)

たった5分で完売するという“幻のスイーツ”ブランド、Mr. CHEESECAKEの「トーキョーチーズケーキ」
たった5分で完売するという“幻のスイーツ”ブランド、Mr. CHEESECAKEの「トーキョーチーズケーキ」

インタビュー前編(特集第5回)はこちら

※本インタビューは、書籍『フードテック革命』(2020年7月23日発売、予約受付中、日経BP)掲載分を一部改編したものです。■Amazonで購入する

シェフは料理ではなく“体験”を作る仕事

自分のやりたいことや価値は、レストランで提供するコース料理でしか表現できず、田村さんが実践されているネット通販での単品勝負はできないと諦めているシェフも多いのでは?

田村氏 そう思っているシェフがいるとすれば、完全な間違いだと思います。もちろん、レストランの最大の強みは、顧客から2~3時間という長い時間をもらい、その中でコース料理という体験を提供できることであるのは確か。しかし、コース料理という“線”を作るには、そもそも一品一品の“点”が良くなければ成立しません。基本的にはコース料理であれ、単品であれ、食べた人がどんな感情になって、その人の行動がどう変わるかが一番重要です。分かりやすく言えば、食べるとおいしくて、感動し、さらに人に伝えたくなるというアクションまで生み出せるかがシェフの腕の見せ所なわけです。

 Mr. CHEESECAKEのように、例えば単品のスイーツをオンラインで展開する場合、コンビニスイーツが競合になる可能性もあります。そうならないためにはどうすべきか。私が思い付いたのは、顧客の“時間”をいただくことです。自宅でもスイーツに向き合う時間をしっかりつくれれば、レストランに近い体験になる。買ってその場で食べられるコンビニスイーツとは一線を画し、「非日常の体験」を提供しようと考えたわけです。

 そこで最初に決めたのが、チーズケーキを冷凍で届けることでした。冷凍状態ではアイスケーキのような食感と酸味が引き立つ味わいを、室温で1時間程度置いた半解凍状態では中心に残る冷凍の食感と外側の滑らかなコントラストを、完全解凍ではまるでブリュレのような滑らかさをと、時間の経過で3段階の味わいを楽しめる。それが、「時間をかけて食べてください」というコミュニケーションを前向きなメッセージに変えたのです。

バニラ、レモン、トンカ豆の3つの香りを生かしたトーキョーチーズケーキ。極上の滑らかさで、口中に爽やかな甘みが広がる
バニラ、レモン、トンカ豆の3つの香りを生かしたトーキョーチーズケーキ。極上の滑らかさで、口中に爽やかな甘みが広がる

自宅で食べるスイーツも、文脈を組み変えることで全く別物の体験になると。

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