
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、さまざまなデザインプロジェクトを推進するのがSPREAD(東京・渋谷)の小林弘和氏と山田春奈氏だ。2020年2月からはコロナ禍に対応する企業や個人の動きを自主的にリサーチ。7月下旬には東京・青山のトヨタ自動車「レクサス」の情報発信拠点「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」のコロナ対策も手掛けた。
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2020年2月からのリサーチプロジェクトは4月にSPREADのFacebookに掲載し、さらにリサーチの中からピックアップして紹介する連載『日刊「コロナとクリエイティブ」』が5月から『Webマガジン「AXIS」』でスタートしています。ソーシャルディスタンス(社会的距離)に配慮した公園や屋外市場の提案など、8月上旬までに約670の事例を集めましたが、始めたきっかけは何ですか。
小林 ヨーロッパで新型コロナが拡大した2月頃、ヨーロッパのデザイナーの友人たちからリアルタイムな状況変化と、それに呼応したさまざまなクリエイティブを知りました。
また同じ頃、私たちが毎年手掛ける新潟県燕三条地域のものづくりを紹介する展示会の準備で、1週間ほどシンガポールに滞在しました。そのとき各施設での厳しい体温チェックや大学の迅速な対応、政府の注意喚起などを目の当たりにしました。同じことが近い将来に日本にも起こると考え、先に進んでいるヨーロッパから学ぼうと今回、リサーチを実施したのです。
4月には日本でも新型コロナが拡大しましたが、ヨーロッパの状況を把握していたので、自分たちは冷静に対応できました。むしろ日本ののんびりした空気に憤りを感じていました。
SPREAD
「問い」のためにリサーチがある
山田 このリサーチは毎日の作業です。時間を決めて世界中のニュースを探し、いくつかピックアップします。リストにまとめながら各事例にキーワードを付けて、さらに気になるものには概要と感想を加えています。
なぜ自主的に手掛けているのかと聞かれますが、このリサーチは「クリエイティブは社会とどう交わるのか」「人の意識変化による社会とクリエイティブの変化は何か」の問いと共にあるのではないかと直感しています。
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