
3密回避のため多くのイベントが中止や延期を余儀なくされている。開催する場合でも、オンラインで主催者と参加者を結ぶといった例が多い。いつでもどこでも結び付くというオンラインの良さはあるが、画面を見ながら相手の話を聞くだけではイベントの臨場感は伝わりにくいだろう。そこでパナソニックは、画面の向こうと視聴者が同時体験できるイベントを考案。コロナ禍における新しい体験をデザインした。
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2020年7月7日から1カ月間にわたって開催したイベント「ナナナナ祭2020」では、オンラインとリアルの双方の良さを味わえるようにした。イベントで実施する約30のプログラムごとに独自の「実験キット」を作って参加者に送付。自宅にいながらイベントを体験できる仕掛けだ。参加者は実験キットを購入するが、売り出すとどれもすぐに完売。参加者からの関心は強く、プログラムに対する満足度も高かったという。
ナナナナ祭とは、パナソニックやロフトワーク(東京・渋谷)、カフェ・カンパニー(東京・渋谷)3社が“未来をつくる実験”として運営するインキュベーション施設「100BANCH」において、毎年7月に開催しているイベント。100BANCHで実験しているスタートアップのメンバーが各プロジェクトを公開する、いわば「学園祭」だ。これまでは100BANCHの施設内で開催して多くの来場者を集めていたが、今回はコロナ禍で開催が難しくなったため、オンラインとリアルによる新しい方法を考えた。
江戸時代の渋谷川へタイムトラベル
例えば、観光と教育の高度化に焦点を当ててアプリ開発を推進しているプロジェクト「TimeTravel at Shibuya」は、「昔の渋谷川へTimeTravel」と呼ぶプログラムを今回のイベントで実施した。講師としてプロジェクトの担当者が登壇。画面上で江戸時代の渋谷と現在の渋谷を対比しながら街歩きをしていくという、約60分のプログラムだ。実験キットとして、過去と現在の渋谷を表現したオリジナルの浮世絵や、江戸時代から続く菓子として野菜の砂糖漬けが自宅に届く。参加者は画面で紹介されるオリジナルの浮世絵の解説などを聞きながら、画面の講師と一緒に砂糖漬けを食べ、その場で質問もできる。講師と参加者に一体感が生まれるようにした。
心を穏やかにする薬草茶を診断
薬草茶を新規事業に結び付けるプロジェクト「The Herbal Hub」は、「未来のセルフメディケーション~ハーブ×人工知能~」というプログラムを実施した。実験キットは、自分の心の健康に最適と診断された薬草茶だ。同プログラムでは質問に答えると最適な薬草茶を診断するAI(人工知能)の「Qusnoki」を用意。参加者はイベント前に診断し、最適な薬草茶を取得しておく。当日は画面上で専門家のトークや参加者のミニワークショップを開催。心の健康に対する知識を深めたうえで薬草茶を体験すれば、より楽しめるようになる仕掛けだ。
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