
「FACTORY900」ブランドを展開する青山眼鏡(福井市)は、飛沫感染対策を狙ったゴーグル型眼鏡を発売した。度入りのレンズが使え、目の周囲を保護できるように独自の加工をフレームに施した。医療従事者向けだが、小売店など新型コロナ対策を必要とする他の業種でも注目を集めそうだ。
新型コロナウイルス対策が当たり前の時代になると、新たなニーズが生まれてくる。すでにマスクや消毒液が日々の暮らしの中に定着しているように、コロナ禍における社会的な必要性のために開発した商品が、今までにない市場を創造する可能性が出てきた。その一例が青山眼鏡が2020年5月に発売した「FA-361A」だ。一見するとおしゃれな眼鏡だが、目の周囲を保護できるように「フード」のような加工を施した。通常の眼鏡と同じように着用しながら、目に対する飛沫感染対策にもなる。医療従事者向けを狙った商品で、自社の眼鏡フレームブランドであるFACTORY900の技術を生かした。
実際に購入した医療従事者に聞くと、「ゴーグルでは眼鏡の上から装着するため、着け心地が安定せず、視野もあまりクリアではなかった。しかしゴーグル型眼鏡は度入りのレンズも使えるため、改めてゴーグルを着ける必要がない。着用感や視界の明瞭さという部分でのストレスがなくなった」と評価。患者に圧迫感を与えないという効果もあるという。「同じ医療現場で働く人たちも、この眼鏡に関心を持っている人は多い」と話す。
メインデザイナーを務める青山嘉道専務を中心に00年に設立されたFACTORY900は、企画から製造、販売までを自社内で行っている。独自開発した5軸の切削加工機を使用したユニークなフレームデザインに注目が集まり、タレントなど芸能人の愛用者も多い。欧州を中心とした地域での国際的な評価も高まっている。
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東日本大震災の際は、「デザイナーとして何ができるだろうかと考えたとき、眼鏡を作ることしかない」と、青山氏はユーザーの気分を明るくできる眼鏡を構想。5軸加工の特徴を生かしてアート性のあるモデルを開発したこともあった。そうした前例もあり、「少しでも世の中に役に立てることをしたい」と新型コロナの拡大に伴い4月中旬から開発を推進。飛沫感染に悩む医療従事者に向け、これまでの眼鏡の装着と変わらない感覚で目の周囲を保護できるゴーグル型眼鏡を作ろうと考えた。
ただし独特な形状のため大量生産することは難しく、大きな売り上げに直接つながる商品ではない。「初回生産は100個で、好評だったので再度、生産している。今後も受注に応じて追加していく」(青山氏)。だが、これまであまりリーチできていなかった医療従事者に注目されたことで、FACTORY900ブランドの認知度向上につながったと同社は捉えている。
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