
なかなか収束を見せない新型コロナウイルス感染症。3密回避など「新しい生活様式」が求められているが、これらを苦痛とするのではなくデザインの力で少しでも楽しく過ごそうとする動きが各社から出てきた。流通や観光などさまざまな業界を取材した。
2020年7月に入って感染者が再び増加し、先が読めない状況が続く新型コロナウイルス対策として、今後もソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保やマスクの着用、3密(密集、密閉、密接)回避が求められるだろう。これらの「新しい生活様式」は、非日常からむしろ日常になる可能性もある。新しい生活様式は新型コロナ収束までの一過性の動きではなく、今後も続く価値観の大転換になるかもしれない。こうした状況を乗り越えようと、デザインによるさまざまなアイデアが出てきた。新しい生活様式を後ろ向きに捉えるのではなく、前向きに楽しく、新しい付加価値にまでつなげようとする動きだ。
例えば伊勢丹 新宿店は新型コロナが短期的なのものではないと見極め、長期戦を覚悟。対策にも自社のブランドに合わせた表現を取り入れている。来店客の不安を少しでも取り除き、今までと変わらないおもてなしの気持ちをアピールした。ブランドを重視する企業ならではの考え方といえそうだ。
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デザイナーが提案した伊勢丹 新宿店の新型コロナ対策
20年4月7日に発令された緊急事態宣言を受けて4月8日から臨時休業を開始し、5月30日に営業を再開した伊勢丹 新宿店。営業再開後の新型コロナウイルス対策には、プロダクトデザインセンター代表のデザイナー、鈴木啓太氏の提案を取り入れた。長い自粛期間が明け、買い物を楽しみに店舗を訪れる人々の気持ちを損なわず、分かりやすく新型コロナ対策を伝えるためだ。
伊勢丹 新宿店は、営業再開に当たって、館内にさまざまな新型コロナ対策を施した。まずは入り口を3つに絞り、各入り口に消毒液を配置。サーモグラフィーによる検温を実施し、入館者のマスク着用も徹底した。
商業施設では、テーブルなどを使って消毒液を簡易的に設置するケースも多いが、伊勢丹 新宿店では、専用の台を用意した。サーモグラフィー用のモニターにも同じような青色の台を用意し、それぞれに大きなアイコンをレイアウト。テキスト情報は補足としてとどめ、手指消毒の推進や、体温測定を行っていることをビジュアルによって知らせようとしている。
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