
家電・ITの見本市「CEATEC(シーテック)」は20年10月にオンラインでの開催を決めた。大規模展示会の代表であるCEATECの成否は、オンラインイベント市場の将来を見据える試金石になる。「ニューノーマルという標語が出展社を引き付けている」と話すCEATEC実施協議会の鹿野清氏に成功の道筋を聞いた。
CEATEC実施協議会エグゼクティブ・プロデューサー
家電やIT、エレクトロニクス分野の大型見本市として知られるCEATECは、電子情報技術産業協会(JEITA)など3団体が主催し、これまで20年にわたり幕張メッセ(千葉市)で開催してきた。20年も同会場での開催を予定しており、20年1月末には出展社向けの説明会を開催していた。その後、新型コロナウイルスの影響を受け、20年5月にはオンラインでの開催を決定したと発表。6月30日にオンラインイベントの概要を改めて発表し、出展受け付けも開始した。リアルからオンラインへの転換をけん引した鹿野氏に決断の背景とオンラインイベントが目指すべき方向性について聞いた。
CEATECのオンライン開催を決めた経緯は。
鹿野清氏 当初は例年通りに、幕張メッセで開催する準備を進め、20年1月に出展社募集の説明会を開いた。当時は夏までの展示会は大変だろうなと、少し甘く考えていたが、米テキサス州オースティンの「SXSW」やスペイン・バルセロナの「MWC」といった大規模イベントも中止になり、次第に状況は厳しくなってきた。主催3団体の1つである電子情報技術産業協会(JEITA)では、日ごろから代表企業との会合を開いている。その中で4月にアンケートを取ると、ほぼ全員から安全面を考えるとリアル開催は難しいという回答を得た。4月後半に議論を重ね、5月初めにオンラインでの開催を発表した。ギリギリまで判断を引き延ばすことになるだろうと見越していたが、その予想は外れた。そのおかげで5月初頭にはスッキリとした気分でオンライン化への一歩を踏み出せた。
オンライン開催の展示で注力しているポイントは。
鹿野氏 近年のCEATECでは、単にパネルの説明を読ませるだけでなく、体験型の展示に注力してきた。超スマート社会、Society 5.0といったテーマを掲げ、単に製品やデバイスを展示するだけでなく課題解決の具体的なソリューションを見せるというものだ。18年にローソンが見せた無人レジ、19年にANAホールディングスが見せたアバターロボットがその具体例だ。そうした体験型の展示をどこまでオンラインで実現できるか、非常に難しいが、リアルでできたことはなるべく実現したい。
そのために、リアルタイムのコミュニケーションを最も重視していく。Webページ内で来場者があたかも会場内を歩いていくようなイメージで企業ブースを訪問し、気になる製品やサービスがあればチャットで質問できて、待機している説明員が回答する。具体的な商談をしたいとなれば、ZoomやTeamsといった外部のリモート会議システムに接続して即座に対話ができる仕組みも設ける。
各企業のブース内では、テキスト、静止画、動画が扱えるフォーマットを用意するが、出展企業は自由な演出ができる。企業のショールームでライブ中継をして製品やサービスを説明するなど、さまざまなアイデアを盛り込める。VR(仮想現実)を使った展示などもありえる。想像もしなかったブースが登場するのではと期待している。
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