
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で、エンターテインメント関連のイベントをオンライン化する取り組みが一気に加速した。ただ単に興行をオンラインに置き換えるだけでは事業の広がりは期待できない。必要なのは、従来のオフラインイベントと新規のオンラインイベントをダブル開催する、参加者の数は少なくとも熱狂的なファン向けの高額イベントを実施するなど、ファンを引き付ける手段の多様化と収益源の拡張だ。幅広いイベント手段で「稼ぐ」仕組みを生み出そうとしている企業の代表として、お笑いの吉本興業の取り組みを紹介する。
人との直接的、間接的接触で感染するとされる新型コロナウイルスの流行は、様々な社会活動、経済活動を停止させた。中でも大きなダメージを被った産業の1つが、コンサートや演劇、スポーツの試合などのライブ・エンターテインメントだ。
ぴあ総研が2020年5月に発表した推計によると、20年2月~21年1月の1年間に見込まれるライブ・エンターテインメント関連の損失額は6900億円。年間の市場規模は2019年度の推計で約9000億円とされており、77%が失われる計算だ。しかもこれは入場料のみ。イベントに伴う物販や飲食、企業協賛などの周辺売り上げは含まれていない。
日本を代表するエンターテインメント企業である吉本興業も例外ではなかった。同社は20年3月2日以降、直営劇場などで行う主催イベントを全て取りやめた。その数はおよそ3000件。「今までどんなときも開いてきた劇場で公演ができないのは正直ショックだった」と吉本興業よしもとセールスプロモーションの福田千佳氏が言うように、創業から108年続く同社の歴史でも至極まれなことだ。
打開策を探る中、着目したのが有料ライブ配信だ。「劇場での公演再開という目標に向けての第一歩」(福田氏)という位置付けで、20年6月に有料ライブ配信サイト「オンライン チケットよしもと」を立ち上げた。
吉本興業がプラットフォームとして採用したのは、電子チケットなどを手掛けるplayground(東京・渋谷)の自社EC構築サービス「MOALA Live Store」だ。利用料金は、ライブ配信チケットの販売手数料が10%から、グッズ販売手数料などが6.5%から。このほか、実施規模などに応じた初期構築費用がかかる(要見積もり)。
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