調査で見えた自粛を楽しむ消費者たち コロナ後の解は「DIY消費」(画像)

「コロナ前」にはもう戻れない。私たち消費者は望むと望まざるにかかわらず、ニューノーマルを受け入れ、生きていくことになる。では消費者はコロナ禍を経てどう変容したのか。企業はどうアプローチしていくべきなのか。消費者調査から浮かび上がってきたのは、自粛を「楽しんだ」人々の姿。第1回は「不便益」というマーケティングのキーワードと、そこから派生する「DIY消費」を紹介する。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの日常はすべて仮初め(かりそめ)だということを思い知らされた。毎日電車に揺られて会社と自宅を往復する、土日に行楽地に向かい家族や友人と楽しむ……。こんな当たり前が当たり前でなくなったことで、これからの消費者はどう変わりゆくのか。

 まずはいくつかの調査から紹介していこう。野村総合研究所(NRI)が2020年5月に行ったコロナ禍の生活に対する緊急調査によると、緊急事態宣言下の5月に「生活に満足している」と答えた人は3月と比べて8%から2ポイント減少。「まあ満足している」と答えた人は10ポイント以上も減少し、55%から44%となった。

生活満足度の変化
生活満足度の変化
20年5月の生活満足度は「満⾜していない」と答えた⼈が同3月と比べて9ポイント増加。「あまり満足していない」と合わせた合計で51%となり、半数を超えた。出所はいずれもNRI:「生活者年末ネット調査」(2019年12月)、「日常生活に関する調査」(2020年1月)、「新型コロナウイルス感染拡大による影響調査」(2020年3月、2020年5月)

 ただその詳細を見ると、少し様相が変わってくる。NRIでは消費者を「高くてもよいか安さ重視か」「お気に入りにこだわるかこだわりはないか」という2つの軸によって4つのスタイルに分類している。そのなかの1つに、満足者が不満足者を上回った層があったのだ。

 それが、「プレミアム消費」。価格が高くてもよく、かつお気に入りにこだわる消費者層で、自分が気に入った付加価値には対価を払うという人。企業からするともっとも魅力的な層と言えるだろう。また、「利便性消費」も満足者と不満足者の割合がイーブン。高くてもよいがお気に入りにはこだわらず、購入する際に安さよりも利便性を重視する消費者層だ。

消費スタイル別に見た生活満足者と不満足者の比率
消費スタイル別に見た生活満足者と不満足者の比率
「プレミアム消費」は59%、「利便性消費」は50%が満足している、と回答した。出所:NRI「新型コロナウイルス感染拡大による影響調査」(2020年5月)
NRIは消費スタイルを4つに分けている(出所:NRI)
NRIは消費スタイルを4つに分けている(出所:NRI)

 残りの2つである「徹底探索消費」「安さ納得消費」は不満足者が満足者を上回った。高くてもいいかどうか、という点が満足・不満足の分かれ目になったということが分かる。

 この調査を行った野村総合研究所 マーケティングサイエンスコンサルティング部の林裕之氏は、「例えば自粛期間中に、ホームベーカリーを買って子供とパンを焼いたり、あえて高い魚を丸ごと1尾買って自分でさばいてみたり、という人が増えた。便利、時短が長期トレンドだったが、効率重視ではなくあえて面倒臭いこと、手間のかかることに挑戦したいという人が多かった」と語る。これがプレミアム消費の一端だったと言える。

 同じNRIのデータから違った角度でも見てみよう。新型コロナウイルスの影響で、何の時間が増えて、何の時間が減ったかというデータだ。大きく増えたのが、「家族と過ごす時間や頻度」と「子供と過ごす時間や頻度」の2つ。「時間の使い方が変わったことで、どうやって家族を設計していくのか。少なからずみんなが自分ごとになったことが大きい」(野村総合研究所 未来創発センターの武田佳奈氏)

新型コロナウイルス感染拡大の前後での変化
新型コロナウイルス感染拡大の前後での変化
30~40代の中学生以下の子供を持つ男性・在宅勤務実施者が対象。家事や育児など生活全般にかける時間が増えた、という人も多かったが、それを上回ったのが「家族と過ごす時間」「子供と過ごす時間」だった。出所:NRI「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う在宅勤務等に関する調査(事前調査)」(2020年5月)

 さらに直接的なデータもある。不動産情報サイト運営のLIFULLの調査によると、8割の人が新型コロナによって暮らしに変化が起こったと回答。だが約68%がさまざまな生活の変化を「ポジティブ」「ややポジティブ」と好意的に捉えていることが分かった。価値観の変化も、「社会を支えてくれる人へ感謝を感じるようになった」「家族やパートナーとの時間を以前よりも大切にしようと思った」といった回答が上位に。「生活・暮らし方を変えていきたい」と答えた人はほぼ全年代で9割以上に達した。

コロナ禍による生活の変化の捉え方
コロナ禍による生活の変化の捉え方
生活の変化をポジティブに捉えると回答した人が全体の68%を占めた。全年代ともに、暮らしを変えていきたいという回答が約90%に。出所:ともにLIFULL「10代から70代の男女合計2万人を対象に行った『新しい暮らしへの兆し調査』」

 コロナ禍で収入がアップした、あるいは生活がむしろ安定した、という消費者は少ないはずだ。にもかかわらず、生活に対しての満足度が高まるというデータは非常に興味深い。では企業は、ニューノーマルを生きる新たな消費者たちとどう向き合い、何を提供していけばよいのか。有識者の声を基にひもといていこう。

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