withコロナ リアル店舗の大変革

新型コロナウイルス対策のため、休業要請や外出自粛が拡大したことで大きなダメージを受けた外食業界。緊急事態宣言が解除され、少しずつ客足は戻りつつあるが、以前と同じ売り上げを確保できるかどうかは不透明だ。そうした中、新しい飲食店の営業形態「クラウドキッチン」が拡大中だ。

無人野菜販売店「ORGANIC LOCKER」の中にある「ORGANIC LOCKER & Kitchen」では、4つの飲食店がキッチンを共同利用している。手前は、スイーツ専門店「Trigger」の段野下泉美氏、奥は創作洋風鍋の「Marmite(マルミット)」の枇榔幸樹(びろうこうき)氏(写真/新関雅士)
無人野菜販売店「ORGANIC LOCKER」の中にある「ORGANIC LOCKER & Kitchen」では、4つの飲食店がキッチンを共同利用している。手前は、スイーツ専門店「Trigger」の段野下泉美氏、奥は創作洋風鍋の「Marmite(マルミット)」の枇榔幸樹(びろうこうき)氏(写真/新関雅士)

 シェアオフィスなどを手掛けるWORLD(東京・中央)は2020年5月14日、クラウドキッチン型店舗「& Kitchen(アンドキッチン)」を東京・浅草にオープンした。和食やハンバーガー店、生パスタ専門店など5人のシェフがキッチンを共同で利用するという珍しいスタイルだ。コンロなどは5人が同時に使うと数が足りないが、営業前の時間を使って下調理を済ませたり、バックヤードを使って作業したりして調整している。料理は、店内の他にテークアウト、デリバリーで提供。客はフードコートのように多様なメニューを楽しめる。

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 クラウドキッチンとは、店舗を持たないデリバリー特化型の飲食店で、キッチンを複数の業態やブランドでシェアする。Webで注文を受け、配送は外部事業者に委託するスタイルが一般的だ。コロナ禍における外食業界の救世主として脚光を浴びている。飲食店の営業自粛が解除されたものの客足が戻らない状況において、個人経営の店舗から大手チェーンまで、“クラウド化”の動きが出てきた。海外ではさらに顕著だ。& Kitchenは、デリバリー、イートイン、テークアウトの3つを兼ね備え、かつ複数人のシェフがキッチンを共有するという独特なスタイルのクラウドキッチンといえるだろう。

「ORGANIC LOCKER & Kitchen」にはテーブル席があり、イートインにも対応する
「ORGANIC LOCKER & Kitchen」にはテーブル席があり、イートインにも対応する
【特集】withコロナ リアル店舗の大変革
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【第2回】レストランがクラウド化 無店舗飲食店「クラウドキッチン」とは ←今回はココ
【第3回】 完全コンタクトレスとおもてなしを両立 日本流ロボット接客
【第4回】 ドライブインシアター復活 3密防ぎ、屋外で得る特別な映画体験
【第5回】 リアル店舗の「3密」防ぐシステム、続々参入
【第6回】 新規客獲得へ Zoom接客はwithコロナ時代の「当たり前」に

 WORLDは、19年11月から同じ場所で和食レストラン「和色 -WASHOKU-」を運営していた。オープン初月から黒字を達成し、その後も順調だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大から外出自粛が広がり、店の売り上げが大幅に落ち込んだ。

 WORLD社長の坂めぐみ氏は、「緊急事態宣言以降、浅草から人がほとんど消えた。20年3月から売り上げが目に見えて減り始め、4月の売り上げは開業当初に比べ85%減になった。営業を継続するには新しい仕組みが必要」と判断した。

 順調だったシェアオフィス事業の発想を生かし、キッチンをシェアしてデリバリーやテークアウトでも料理を提供することを思いつく。「活躍の場を奪われたシェフにチャンスを提供したい」(坂氏)という考えもあった。

WORLDの坂めぐみ社長(写真/新関雅士)
WORLDの坂めぐみ社長(写真/新関雅士)

 そうと決めると動きは速かった。4月中旬からSNSやWebサイトを使ってシェフの募集を開始。コロナ禍で廃業した老舗レストランや、新たな販路を開拓したい店などのシェフが手を上げた。面談などを経て最終的には、5人がクラウドキッチンを利用することが決まった。募集開始からオープンまで約1カ月という早さだった。

 & Kitchenのビジネスモデルはこうだ。シェフに初期費用、家賃、光熱費いずれも無料でキッチンのスペースと設備を提供。キッチンの利用料としてシェフから売り上げの30~50%を徴収する。Webサイトや広告、パンフレット、看板、SNSなどでの情報発信はWORLDが行い、シェフから費用は取らない。

 坂氏は、「通常の飲食店では、家賃や光熱費、食材費などを引くと、利益として残るのは5~10%程度。& Kitchenでは利用料と食材費を引いても20~25%がシェフの手元に残る」と話す。シェフにとっては、集客に欠かせない情報発信に時間を割く必要がなく、料理に専念できるメリットも大きい。

Webサイトや広告、パンフレット、看板、SNSなどでの集客に必要な情報発信は運営会社が行う(写真/新関雅士)
Webサイトや広告、パンフレット、看板、SNSなどでの集客に必要な情報発信は運営会社が行う(写真/新関雅士)
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