新型コロナウイルスの感染拡大以降、動画サイトの利用が急増。さらに次世代通信規格「5G」のサービス本格化によって、動画マーケティング市場は具体的にどのように変化するのか。5回にわたる連載では大手企業の事例から、次世代の動画マーケティングの可能性を探る。

2020年4月に開始された次世代モバイル動画サービス「Quibi」のアプリは同月中に100万ダウンロードを超えた
2020年4月に開始された次世代モバイル動画サービス「Quibi」のアプリは同月中に100万ダウンロードを超えた

 2020年3月23日にKDDIがauの5G商用サービス開始を発表した。これで楽天を除く大手3社のサービスが出そろったことになる。そして、3月25日のNTTドコモのサービス開始を皮切りに、大手3社の5Gサービスが順次開始予定だ。

 5Gの普及により、動画市場はどのように変化していくのだろうか。一般的には5Gの普及によってインターネット動画が高画質・低遅延になることが期待されている。4Gとスマートフォンが日本中に普及した結果、外出時にも安定して動画を視聴できるようになった。19年にニールセン デジタルが発表した「Digital Trends 2019上半期」によれば、スマホ利用者1人当たりの月間動画視聴時間は、15年の1時間51分から7時間13分へと、4年間で約4倍に成長した。

ニールセン デジタルの調査「Digital Trends 2019上半期」によれば、スマートフォン利用者1人当たりの月間動画視聴時間は、15年の1時間51分から19年の7時間13分へと、4年間で約4倍に成長した
ニールセン デジタルの調査「Digital Trends 2019上半期」によれば、スマートフォン利用者1人当たりの月間動画視聴時間は、15年の1時間51分から19年の7時間13分へと、4年間で約4倍に成長した

 5Gサービス開始によって、より高画質で安定したサービスが供給されれば、それに伴い1人あたりのインターネット動画視聴時間はさらに増加していくことは容易に予想できる。ただし、高画質・低遅延であることだけで、動画市場全体が急激に活況になるとは思えない。5Gの普及により、動画市場がこれまで以上に広がり続ける理由は「データ容量の無制限化」が進むことがより大きなファクターと言えるだろう。

 19年にソフトバンクが実施した調査によると、スマホ利用者の約4割がモバイルインターネットの利用超過による速度制限を経験している。速度制限になる層は「15~19歳の女性」「20代の男性」が多く、約8人に1人がほぼ毎月速度制限になっている。また、速度制限を受けている人ほど、動画アプリ全般の使用傾向が高くなっていることも同調査で分かっている。これらの結果は、速度制限を受けている人は、スマホ上で動画を視聴したいが、容量制限により視聴できていないことを意味している。

5Gと新型コロナの影響で動画メディアの価値向上

 これが5G普及で大きく変わりそうだ。キャリアが通信速度制限を設定している大きな理由の1つは、利用者が大量にデータ通信を行うとネットワークが破綻してしまうためだ。このキャリア側の事情による制限は、5Gが今まで以上に高速・大容量のネットワークになることで理論上は解決する。実際に20年3月末に出そろった各キャリアのうち、ドコモは「データ量無制限キャンペーン」を打ち出しており、KDDIも「データMAX 5G」というデータ使い放題をうたうプランを発表している。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大は、結果的に動画市場拡大を押し上げている。人々は在宅を余儀なくされ、多くの映画館やアミューズメント施設が休業に追い込まれる中、自宅での余暇時間が動画配信サービスの利用に費やされている。その結果、米ネットフリックスの株価は過去最高値を記録。米グーグルはインターネット動画の視聴数の増加によるネットワーク全体の負荷が予想されることから、動画配信サービス「YouTube」のデフォルト再生画質を一時的に下げることを発表した。

 5Gの普及とコロナ禍における急激な動画配信サイトの利用者増加。これらの理由により、動画配信サイトのメディアとしての価値はさらに高まるだろう。とはいえ、率直に言えば、決して新しいテクノロジーが目白押しというわけではない。これまでリアル重視で日本において定着に時間を要してきた技術が、イベント自粛や在宅勤務の長期化が予想される中、その利便性と効率性に対する理解が日本でも瞬く間に進みつつある。