コロナショックにより、チャネルのオンラインへのシフトや、デジタルによる顧客との直接的なつながりを築く流れは、急激かつ不可逆的に推し進められることになった。新しい時代において、これらの「場」の進化がどんな事業モデル変革を引き起こしていくのか。第6回では、前回に引き続き米アマゾン・ドット・コムの事例を通して、取り組むべき問いを考えていく。

アマゾンが2020年9月、米国でオープンした「Amazon Fresh」
アマゾンが2020年9月、米国でオープンした「Amazon Fresh」

 「Amazon Fresh」がオフライン店舗において示したのは、既にアマゾンがオンライン店舗で実現している顧客体験である。それらは、選択履歴に応じたオンタイムの商品推奨、購入に応じたプライム会員への割り引き、デリバリーやBOPIS(オンライン注文の店頭受け取り)対応が提供されている。そして、それを超えて、顧客理解に基づく品ぞろえや商品そのものの開発を最適化していくループを見据えているのは、前回の記事(アマゾンの“未来のスーパー”徹底分析 「Go」との違いは?)で示した通りだ。そこでは「良い立地にオフラインの店舗を構え、そこでいかに多くの商品を売るか」という、これまでの「商品販売」を基点とした小売りのビジネスモデルが前提になっていない。すなわち、当初は小売りのDXと考えられていたOMO(オンラインとオフラインの融合)を成し遂げたその先にある、「顧客を基点とした新しいマーケティングモデル」を示していると考えるべきだろう。それこそが、真の顧客基点のDXなのだ。

 デジタル社会が到来していることなど、もはや誰でも知っている。重要なことは「デジタル社会の到来が何をもたらすのか」という価値を、顧客基点でどう見立てるかだ。既存のマーケティングモデルを前提として「それをデジタルで効率化する」という発想に立てば、「Amazon Go」もAmazon Freshも、単なる「店頭ツールのデジタル化」あるいは「チャネルのOMO化」にすぎない。そこで出てくる議論は、「そこへの投資によってどのくらいの効率化が図れるのか」に終始する。しかし、デジタル化を前提として「マーケティングモデル自体を変革する」という発想に立てば、アマゾンが実現しようとするモデルの核心が見えてくる。その起点はデジタル社会を「顧客との常時接続社会」と見ていることにある。そして、その顧客とのつながりを基点としたマーケティングモデルが、顧客のペインの減少とゲインの増大につながる。さらに、このマーケティングモデル変革からの学びは、多様な業界に影響を与えることが見えてくるはずである。