コロナショックにより、チャネルのオンラインシフトや、デジタルによって顧客と直接的なつながりを築く流れは、急激かつ不可逆的に推し進められることになった。新しい時代において、企業は顧客とどのようなつながりを、どのような場で、どんなモデルで築いていくのか。連載第4回では、前回に引き続き、ニトリなど国内外で先行する企業事例を通して、取り組むべき問いを考えていく。

米国ではコロナ禍の前からBOPIS対応が進んでいた(筆者ら撮影)
米国ではコロナ禍の前からBOPIS対応が進んでいた(筆者ら撮影)
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 前回の第3回(心に残った1本のメール 顧客とのつながりを強めるデジタル活用)では、筆者らの友人が愛用していた別ブランドから、コロナ禍にニトリへとスイッチした事例を紹介した。「そんなたった1人の体験談」と思うかもしれないが、彼女のような顧客は他にもいたはずだ。ニトリは以前からWebルーミングやショールーミングに対応し、店頭で商品をスキャンして自宅に届ける「手ぶら de ショッピング」や、オンラインで購入して店頭で受け取れるBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)対応といったデジタルタッチポイントの強化を進めていた。新型コロナウイルスの感染拡大前から、自社でのデジタルによる顧客接点を構築することによって、顧客体験を向上させてきたわけだ。その差が、コロナ禍で如実に出たと言える。

 

去った顧客は容易には戻ってこない

 新型コロナウイルスの影響で顧客行動のすべてが変わるとは思わない。しかし今回のコロナ禍におけるチャネルシフトによって「デジタルの快適さ」に触れた顧客の行動は、アフターコロナにも元には戻らないのではないかと筆者らは考えている。コロナ禍で「デジタルを含めたニトリ体験の良さ」に気づいた顧客は、ニトリへのエンゲージメントを高め、以前のブランドには容易に戻ってこないのだ。

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