中国EC最大手のアリババ集団傘下の物流会社の菜鳥(ツァイニャオ)は2022年11月24日、スイスの食品大手ネスレグループ中国拠点(以下、ネスレ中国とする)と新しく連携協定を結んだことを発表した。今後両社は、D2C(Direct to Consumer、消費者直接取引)の配送オペレーションから物流の自動化、IoT技術などまでを対象とし、ネスレ中国が構えるサプライチェーンのデジタル化・スマート化を共同で強化していく。
今回の新たな連携の目玉は、ネスレ中国のサプライチェーン部門がツァイニャオと連携して打ち出したフルフィルメントセンター(物流倉庫・配送拠点)だ。このセンターは、中国江蘇省の蘇州市で稼働を開始しており、ツァイニャオの高品質な物流サービスによって、ネスレグループの高品質な食品を、中国の消費者の手元に正確に届ける仕組みが整えられている。
D2Cモデルは、ブランドが消費者に対して製品の販売を直接行うことを可能にしているが、このモデルを実現するには、新しいサプライチェーン(物流体系)の構築が必要となる。このセンターがもたらす新しい物流体系には、以下の3つの注目すべきポイントがある。
D2Cフルフィルメントセンターの全貌とは
1つ目は、自動化技術の導入による手作業の省略だ。配送拠点となるD2Cフルフィルメントセンターには、例えばAGV(自動搬送車)ロボットを導入することで、「人が物を探すモデル」から「物が人を探すモデル」への転換を実現している。従来型の人の手による荷物の選別と比較して、選別効率は約3倍向上しており、倉庫内の作業員は特定の作業場で立ち作業するだけで、作業を完了することが可能だ。ネスレ中国によると、現場の作業員は1人当たり毎日平均2万歩の移動を削減することができるという。
2つ目は、データ活用によるオペレーションのスマート化だ。ツァイニャオのサプライチェーンが提供する倉庫配達サービスを利用できるほかにも、ネスレグループのサプライチェーン可視化プロジェクトである「デジタルサプライチェーンセンター(DSCC)」もサポートする。これでツァイニャオは、ネスレ中国に対し、サプライチェーンの数智化(中国語で、数はデジタル化を指し、智はスマート化を指す)と食品市場に対するインサイトの獲得、倉庫のオペレーションのスマート化をサポートし、消費者のニーズに素早く安定的に対応可能にしている。これによりネスレ中国は、データを効果的に活用し、消費者を中心に置いたサプライチェーンネットワークの構築が可能になる。同時に、ネスレ中国のオペレーション部門はオンライン上で在庫状況を確認できるため、在庫状況の最適化と在庫回転率の向上にもつなげられる。
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