中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は2022年11月、自社のメタバースアプリ「希壤(シーラン)」上で、バーチャル(仮想)都市空間を続々と発表している。1つは中国浙江省杭州市のマスメディア企業「都市快報」が手掛ける都市空間「西子・元杭州」、もう1つは香港に拠点を置く芸術系複合企業大手「超媒体控股(メタメディア)」が手掛ける「元邦(ユエンバン)」だ。
杭州市の仮想空間バージョンを展開
シーランが発表したバーチャル都市空間の1つ目の事例である「西子・元杭州」は、マスメディア企業の都市快報が1年近くかけて準備をしたプロジェクトで、国内メディアによる初のメタバース上のバーチャル空間だ。その趣旨は、20年前に同メディアの紙媒体を創刊したときと同じく、「いつどこにいても、杭州市とそこで生活する人々との間につながりを生みだすこと」にある。2022年11月4~6日に開催された「2022杭州(国際)未来生活フェス」には、メタバース上のバーチャル空間の体験ブースも設置された。
このメタバース上のバーチャル空間は、杭州市の代表的観光地であり、世界遺産でもある西湖を中心に、その周辺に位置する有名観光スポットまで含め、バーチャルで再現させている。加えて、その空間にゆかりのある歴史上の著名人や、未来生活フェスのバーチャルユーザー体験責任者である霊光氏を含め、7人を登場させている。ユーザーは、同空間内の街中でこれら歴史上の人物と会い、都市の沿革に関する理解を深めることができる。
“超現実”なバーチャル都市を構築
2つ目の事例である「元邦」は、芸術文化のトレンドと科学技術を深く融合させ、現実に近づけたバーチャル都市で、理想主義、未来主義、そしてロマン主義を一体化して体験できる没入式デジタル桃源郷といわれている。元邦の中核地区には、国際的に著名な芸術家である曹斐(ツァオ・フェイ)氏を招待し、彼女の監修の下で制作した、レトロSF風の浮遊式コミュニティー建造物「多托邦(デュオトピア)」が配置されている。ここでは、多様性と自然主義を都市計画の基本方針に取り込んだうえで、元邦を今後、バーチャル世界の万華鏡のような存在にしていくという構想が持たれている。
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