中国の画像認識大手である商湯集団(センスタイム)は2022年10月15日、上海中国将棋院と共同で、自社の家庭向けAI(人工知能)中国将棋ロボット「SenseRobot(センスロボット)」と中国将棋のプロ棋士たちの対局イベント「元蘿蔔杯人機巔峰対決」を開催した。今回の対局は、中国将棋の歴史において、感知から意思決定、そして制御までの全てのプロセスを自主的に実行できる将棋ロボットと人類最高レベルの棋士との初の公開対局となった。

「元蘿蔔杯人機巔峰対決」のイベント会場の様子(画像はセンスタイムのニュースリリースから)
「元蘿蔔杯人機巔峰対決」のイベント会場の様子(画像はセンスタイムのニュースリリースから)

 ボードゲームにおけるロボットと人類の対戦といえば、2016年3月に開催された、米IT大手「Google(グーグル)」傘下のAI開発会社ディープマインドが開発した囲碁ロボット「AlphaGo(アルファ碁)」と囲碁世界チャンピオンかつプロ9段棋士「李世●(石の下に乙)(イ・セドル)」氏の対局が、世界的に注目されたものとして有名だ。このとき、アルファ碁は、莫大な量のCPU(中央演算処理装置)とGPU(画像演算処理装置)へ接続し、大量の計算を処理しながら対局を行っていた。そのエネルギー消費量は、人間の脳の5万倍となっており、これはスーパーコンピューターの水準に相当する。

 今回、プロ棋士たちと対局を行ったセンスロボットは、家庭の卓上に設置するだけで人間と対局できるコンパクトな中国将棋ロボットだ。このロボットは、対局状況の変化を観察して推計しながら将棋を指すだけでなく、将棋の駒をつかんで将棋盤に置く動作まで、全てを単独で自律的に行うことができる。加えて、対局者の中国将棋のレベルに合わせて26段階のレベル設定が用意されているほか、ミリメートルレベルの操作精度やビジュアルで識別した将棋駒の位置に従い、アームが対局の進行度に同期して動く自然な動作が特徴である。

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センスロボットとプロ棋士の対局の結果は?

 まずセンスロボットと対局したのは、顧博文(グー・ボーウェン)氏だ。彼は上海市出身で、12歳から16歳を対象とする青少年の中国将棋チャンピオンである。対局においては、中級レベルの第16段を選択。顧氏が先行して戦局を展開したものの、センスロボットが一枚上手となり、積極的な攻め寄せに成功。30分間の対局の結果、センスロボットが、よりレベルの高い将棋力で勝利を収めている。

12歳から16歳を対象とする青少年の中国将棋チャンピオン「顧博文(グー・ボーウェン)」氏とセンスロボットの対局中の様子(画像はセンスタイムのニュースリリースから)
12歳から16歳を対象とする青少年の中国将棋チャンピオン「顧博文(グー・ボーウェン)」氏とセンスロボットの対局中の様子(画像はセンスタイムのニュースリリースから)

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