中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)のWeb会議ツール「騰訊会議(テンセントミーティング)」傘下の「天籟実験室(TEA Lab)」は「2022国際ろう者週間」開始の日である2022年9月25日に、「騰訊天籟行動2022年度発表会」を開催した。会場では、テンセント内外部の提携パートナーと共同で補聴器、ミニプログラム、聴力健康サービスネットワークを組み合わせた高齢者向け聴覚障害対応ソリューションを発表した。
中国の最新の公式人口統計である「第7回全国人口普査」および「中国聴力健康現状および発展トレンド」報告によると、中国国内には約1億2000万人の異なる程度の聴覚障害を持つ高齢者が存在するという。聴覚に関する問題は、高齢者の転倒や認知障害、うつ病などの心理的問題を引き起こすリスクがあり、高齢者の生活の質に大きく影響する。中国では、高齢者が自主的に聴力検査を行う割合の低さや聴力に関する知識の不足、そして高品質な補聴器の価格の高さなどにより、聴覚障害を持つ高齢者の補聴器装着率は約6.5%しかないのが現状だ。また、聴力の低下が分かってからその治療を積極的に行うに至るまで、数年から数十年を要している点も大きな課題となっている。
そこで、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)のSSV(持続可能社会価値事業部)は、その傘下の銀髪科技(インファークージー)実験室と天籟実験室、そしてスマート補聴器スタートアップ「智听科技(Eartech)」と共同で、SNSアプリ「微信(ウィーチャット)」内で開けるアプリ内アプリである「小程序(ミニプログラム)」と補聴器、そして聴力健康サービスネットワークの3つを組み合わせたソリューションを開発。これをもって、中国の高齢者が聴覚低下問題に対して対処できるように支援をしていく。
聴覚障害対応ソリューションの全貌とは
補聴器については、天籟実験室と銀髪科技実験室が補聴に必要なアルゴリズムを開発し、智听科技の補聴器のソフトウエアとハードウエアの両方を最適化している。これにより、補聴器の音声処理の時間ラグを10マイクロ秒以内に低減した他、消費電力も少なくて済むようにした。さらに、複雑な環境下における音声明瞭度と聞き手理解度をそれぞれ85%も上昇させた。つまり、1万元(約20万5700円)の輸入補聴器に匹敵する性能を、1000元(約2万570円)クラスの補聴器で実現したことになる。
また、同日にはテンセントの公益慈善基金会などが共同で、「挚听(騰訊天籟inside)補聴器」のチャリティーモデル「公益助老款(直訳でチャリティー高齢者補助バージョン)」を発表した。この商品が1つ販売されるにつき、1つの補聴器を、必要とする高齢者に寄付していくというのが、チャリティーの内容だ。なお、テンセントはこのチャリティー事業の一環で、広東省韶関市の民政部と協力の下、生活に困難を伴う聴覚障害を持つ高齢者500人に対して、無料で最新の補聴器を寄付済みだ。
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