中国EC最大手のアリババ集団の研究機構「達摩院」(ダモアカデミー)は2022年3月21日、風力発電所の風速と発電効率の正確な予測ができるAI(人工知能)アルゴリズムの研究開発に成功したと発表した。このアルゴリズムは、平原や山地、そして海岸などの異なる地形での風速のみならず、風力発電所の発電効率も正確に予測ができる。山地のような複雑な環境下において、予測精度の向上により、風力発電所の発電効率をこれまでより20%以上向上させることができた。

風力発電所のイメージ(画像はアリババのニュースリリースより)
風力発電所のイメージ(画像はアリババのニュースリリースより)

 風力発電は、中国において最も発展が早い「再生可能エネルギー」の1つだ。国家能源局(国家エネルギー局)のデータによると、2021年だけで、中国の風力発電量は6526億キロワット時に到達し、前年同期比で40.5%の成長を記録している。しかし、風にはランダム性(吹くときと吹かないときがある性質)や間欠性(吹いたとしても顕著な変動がある性質)といった特徴があり、とりわけ山地では山谷風の還流の影響によって、局所的な気候を発生させてしまう。同時に、通常の天気予報で風力発電所がある場所の実際の風の速度を正確に把握するのは困難が伴うため、発電効率の予測精度が低下したり、電力系統の運営が不安定になったりするなどの問題がある。

 この問題に対し、ダモアカデミーの「AI Earth」チームが、高精度グリッド気象および発電効率の予測モデルを開発した。このモデルでは、独自に考案した物理方程式を組み込むことで、予測結果に物理的な制約を反映させ、実際の状況に近づけることができる。同時に、地理空間の特徴をより効率的に捉えることを可能とし、天気予報の精度を100メートルグリッド(100メートル四方)で予報できるレベルに向上させることができる。これにより、複雑な地形による風速の大きな違いを認識し、より正確な風速および発電効率の予測を実現している。

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