中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)傘下で、ネット広告事業を手掛ける「騰訊広告(テンセント広告)」は2021年9月8日、2021年第3回中国高級品デジタル化イノベーションサミットにて、高級品業界でのデジタルマーケティング戦略を紹介した。テンセントは「ソーシャル+取引+コンテンツ」が一体となるデジタルエコシステムモデルを構築。それをベースとした3つのイノベーションの秘訣を提唱した。
テンセントが提唱する3つのイノベーションとは
テンセントが提唱する3つのイノベーションの1つ目は、ブランド構築だ。同社はソーシャルネットワークサービスのツールを利用し、ブランドの知名度を効果的に上げることに成功している。自社が運営する利用者数約11億人に達する中国最大のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」を活用する。ウィーチャットは購買促進やコミュニケーション、そしてモノの売り買いなどの機能が一体となった総合プラットフォームとなっており、その特性を生かせば、消費の購買行動を広範囲にカバーし、行動変容を促すことができる。
例えば、単に閲覧するだけの広告とは違い、タッチ操作といったインタラクションを起こすことができるインタラクティブな広告を、ウィーチャット上のつながりのある友人同士で投稿・閲覧ができる「朋友圏(モーメンツ)」に配信することができる。インタラクティブさで消費者の注意を引き、ブランド側が狙うターゲット層の消費者をより効果的に獲得できる。
2つ目は、ビジネスイノベーションである。テンセントの統計によれば、商品販売額全体の7.5~20%はリアル店舗の営業時間外に計上されており、テンセントはこうしたオフラインの“資産”のデジタル化が必然的なトレンドとなると見ている。
ここでテンセントはウィーチャット上で開くことができるアプリ内アプリの1つである「小程序商城(ミニプログラムモール)」を提供する。ブランドはミニプログラムモールを活用することで、オンライン上に店舗を設けてオフライン店舗の営業時間外でも売り上げを上げることができる。その上、これまでよく見られたECプラットフォームの活用とは異なり、消費者に対して直接アプローチできる「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)」の側面を強化できるというメリットがある。
加えて、ミニプログラムモールは高級品ブランドが既に抱えているオフライン上の消費者を、オンラインに誘導することもサポートする。ブランド側は、抱えている消費者をすべてのライフサイクルにおいて管理でき、提供する商品モデルなどをコントロールしつつ、ブランドの様々な面で消費者がアップグレードすることを期待できる。言い換えれば、商品開発と提供、データの収集と管理・分析、マーケティングの展開というそれぞれの側面で自主性を持つことができる。
この記事は会員限定(無料)です。