中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)は2021年4月22日、中国信息通信研究院(中国信通院)と共同で、「数字化就業新職業新崗位報告(日本語直訳:デジタル化就職新職業新役職リポート)」を発表した。テンセントが運営するチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」が形成するエコシステムは20年に、前年比24.4%増となる3684万の就職機会を創出。ウィーチャットなどのデジタル技術が職場の働き方を変え、就職の在り方にも大きな変化をもたらした。4つの興味深い新常態を観察することができる。

発表された「数字化就業新職業新崗位報告」の表紙(画像はテンセントのニュースリリースより)
発表された「数字化就業新職業新崗位報告」の表紙(画像はテンセントのニュースリリースより)
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ウィーチャットなどが就職の在り方にもたらした4つの新常態

 ウィーチャットなどのデジタル技術が就職の在り方にもたらした4つの新常態の1つ目は、従来型の職業が、デジタル技術を活用したい人々に広く就職機会を与えられるようになったことだ。海外からの代理購入やライブコマースの運営、商品を宣伝するショートムービーを作成して発信する動画チャネルの企画・運営など、デジタル技術を用いる新たな業務が急速に生じている。それに伴い、ライブ販売員や少額融資者、インターネットマーケター、デジタル化ツールの活用法を教える講師など、新たな職種が生まれている。就職する側から見れば門戸が広がった格好だ。ウィーチャットはそうした新たな職種のニーズに応えるさまざまな機能も提供している。

 果物を10年販売している王さん(仮名)を例に挙げる。王さんはこれまでオフラインで果物を販売していたが、現在は顧客が集まる4つのウィーチャットグループをオンラインで管理しており、共同購入の手配や顧客ごとにタグ付けをすることで、商品をレコメンドしたりしている。加えて、ライブ配信で果物を紹介するなど多くのツールも活用している。このように、ウィーチャットなどを活用することで多くのファンを集め、オンラインとオフラインの双方で果物を販売し、オフラインのみだったこれまでの販売方法を大きく変えたのだ。

 2つ目は、就職の際に存在した学歴というハードルが、これまでより低くなったことだ。例えば、ウィーチャットが生み出した職種の1つに「小程序(ミニプログラム)」の開発者がある。ミニプログラムはウィーチャット上で開くことができるアプリ内アプリである。リポートによれば、20年にミニプログラムの開発と運営だけで約780万人の雇用を生んでいる。そのうち、大学生以下の学歴を有する就業者は47%を占めており、大学院卒などの高学歴はそれほど求められなくなった。

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