中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は2021年4月、同社の音響実験室の中に設置されている消音室を公開し、完全ワイヤレスステレオ(TWS)イヤホンの機能の1つである、ノイズキャンセリング技術の開発における秘密の一端を明らかにした。20年9月10日にファーウェイが発売したイヤホンの1つである「HUAWEI FreeBuds Pro」は、世界で初めてスマートダイナミックノイズキャンセリング技術を搭載した製品で、市場をけん引している。
TWSイヤホンといえば、ユーザーを有線イヤホン特有の物理的な束縛から解放し、より自由なコミュニケーションを可能にした点に特徴がある。そこへ、ファーウェイが独自開発したスマートダイナミックノイズキャンセリング技術が加わることにより、喧騒(けんそう)の中でも澱(よど)みのない音声が広がる世界を実現できる。
そのスマートダイナミックノイズキャンセリング技術の開発に欠かせないのが、ファーウェイの音響実験室にある消音室である。消音室とは、主に音声学のテストにおいて音声データの採集のために使用される場所で、その内部には、一般的な壁や床、天井が存在せず、代わりに音声吸収材がすべてを覆っている。音声吸収材は楔形のブロック状の形状をしており、表面には無数に小さな穴がある。表面にある無数の小さな穴を通じて、音はブロック内部に吸収され、室内の音反射や外部の雑音を最小限まで削減できる仕組みだ。
マネキンを使って現実に限りなく近い音を録音
実は、自然界で発生するさまざまな音声を人間が大脳神経で感知するまでの過程では、耳の構造からして多くの要素が複雑に関係し合っており、人間の聴覚を主体とした音声採集は簡単ではない。そこでファーウェイは、その過程が音声採集に与える影響を正確に捉えるために、実験室内に録音可能なマネキンを設置した。このマネキンは人間の耳を細部まで模倣し、その鼓膜の近くの位置に全方向対応の小型マイクを設置することで、実際に人間の聴覚が音声を受け取ったときに受けるあらゆる影響を、現実に限りなく近い形で再現している。
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