米フェイスブックがMeta(メタ)への社名変更を断行し、全集中する「メタバース(仮想空間)」。これまでの“一部メタバース的なサービス”と何が違うのか。周辺産業に与えるインパクトはいかほどか。日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が読み解く。

米フェイスブックは社名を「Meta(メタ)」に変更、メタバースに注力する(写真/Shutterstock)
米フェイスブックは社名を「Meta(メタ)」に変更、メタバースに注力する(写真/Shutterstock)

 2021年10月28日(米国時間)、米フェイスブックは自社イベントの「Connect 2021」において、社名を「Meta(メタ)」に変更すると発表した。社名変更は「メタバース」に大きくかじを取るという決意の表れであると同時に、これまでメインプロダクトとしてきたSNS、Facebookの事業領域を大きくアップデートしようとする試みだ。

 近年、InstagramやTikTokなど、若年層向けのSNSが登場する中で、Facebookの存在感にはやや陰りが出てきていた。そのような背景が今回の社名変更につながっていると考えられる。

 基調講演ではCEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏によるメタバース構想のプレゼンに多くの時間が割かれた。本連載の前回では、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)の基礎的な解説に加え、メタバースに関しても触れたが、今回はさらにメタバースについて考察を深めていくことにしたい。

「メタバース」は古くて新しい概念

 そもそも、メタバースには明確な定義がなく、様々な解釈が存在することは前回解説した。とはいえ、現時点では、「誰もが現実世界と同等のコミュニケーションや経済活動を行うことができるオンライン上のバーチャル空間」というように定義して大きな誤りはない。

 ところで、このようなバーチャル空間は過去にもいくつか存在している。例えば、MMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game:大規模多人数同時参加型オンラインRPG)は、メタバースの一種だと筆者は考えている。MMORPGは、インターネットを通じて多くのユーザーが一つのワールドで冒険を行う形式のゲームだ。

 1997年に発表された『ウルティマオンライン』、98年にサービスが開始された韓国のMMORPG『リネージュ』、2002年に開始された『ラグナロクオンライン』、日本発では02年に開始された『ファイナルファンタジーXI』や2010年に開始された『ファイナルファンタジーXIV』など多くのタイトルが存在する。

 これらのMMORPGでは、いずれもゲーム内で生産活動を行ったり、他のプレーヤーと交易ができたりと、メタバースの根幹を成す条件の1つである経済活動が成り立っている。その意味で、既に20年以上前のインターネット黎明(れいめい)期から、メタバースという概念は特にゲームの世界では存在していたといえる。

 また、メタバースを語るときに必ずといっていいほど引き合いに出されるのが『セカンドライフ』だ。今から18年前の03年6月に運営が開始されたこのワールドは、現在でも運営されている。セカンドライフの世界の中では、MMORPGのように強大な敵を倒すといった目的は存在しないが、リンデンドルという仮想的な通貨を使い、3Dの製作物を売り買いしたり、バーチャル空間上の仮想的な土地を売買したりすることができる。

 このように、一部メタバースと呼べるようなサービスは、これまでにも登場していた。それでは、今回Metaが目指しているサービスは何が違うのか。

Metaが目指すメタバースは何が違うのか

Metaが目指すメタバース、3つの成功ポイント(出所:日本政策投資銀行作成)
Metaが目指すメタバース、3つの成功ポイント(出所:日本政策投資銀行作成)

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