日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が、産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を読み解く連載。今回は、製造業で必要とされる「サービス化」の視点を、コーヒー焙煎(ばいせん)機メーカーの米Bellwether Coffee(ベルウェザーコーヒー)の先進的な取り組みから紹介する。

米Bellwether Coffeeはコンパクトな電動式焙煎機を提供するだけではなく、持続可能なコーヒー豆のマーケットプレイスを運営し、豆ごとに最適化された焙煎プログラムも用意する(写真提供/Bellwether Coffee)
米Bellwether Coffeeはコンパクトな電動式焙煎機を提供するだけではなく、持続可能なコーヒー豆のマーケットプレイスを運営し、豆ごとに最適化された焙煎プログラムも用意する(写真提供/Bellwether Coffee)

 製造事業者が、顧客ニーズに即した価値を提供するために行うビジネスモデルの変革の方向性として「サービス化」がある。それは、モノを製造して消費した顧客から対価を得るビジネスから、製造したモノにサービス要素を付加し、顧客が経験したときに生まれる価値から対価を得る考え方にシフトすることだ。

 しかし、製造業のサービス化はあまり進んでいないように思われる。その最たる理由が、「具体性のなさ」「イメージのしにくさ」ではないだろうか。そこで本稿では、コーヒー焙煎機メーカーの米Bellwether Coffee(ベルウェザーコーヒー)の事例を通じて、サービス化を進める上での着眼点について述べたい。

 具体的な事例を紹介する前に、まずはコーヒー消費の変遷を振り返ってみよう。世界的なコーヒー消費の流れは、コーヒーの大量生産・大量消費が進んだ1960年代までが「第1の波」とされている。日本では、戦後に喫茶店文化が発展し、コーヒーは嗜好飲料として定着した。「第2の波」は、スターバックスやタリーズコーヒーなど、深煎りのコーヒー豆を使ったシアトル系コーヒーチェーンの台頭である。エスプレッソをベースにしたメニューが取りそろえられた。

 そして2000年代以降、「第3の波」として、ブルーボトルコーヒーに代表されるハイエンドなコーヒーが現れた。現在では、コーヒーの生産国だけでなく、専用農家からの調達、焙煎、いれ方までにこだわるスペシャルティーコーヒーの時代が訪れている。

 こうしたコーヒー消費の変遷において一貫して見られる潮流は、顧客が高い品質のコーヒーを追い求める行動だ。コーヒー豆の種類が多様になったことに加え、焙煎の種類、産地、豆の収穫の仕方などにも、こだわる人が出てきている。それに応じてコーヒー店は、このような消費者の行動変容に対応していくために、自身で焙煎をしないと差別化が難しくなってきた。

 しかし、焙煎機は機械自体が大きく、設置が困難でコストがかかる。また、焙煎や装置の操作に関するノウハウを習得することにも時間がかかり、安定した品質を得るのに多くのリソースを割かなければならない。

 つまり、現代のコーヒー店はバリスタの技能に加え、焙煎職人の技巧も求める顧客要求への対応という課題を抱えている。これに対してユニークなアプローチでコーヒー店のクラフトマンシップを後押ししているのが、13年に設立されたカリフォルニア州バークレーのコーヒー焙煎機メーカー、Bellwether Coffeeだ。同社は、一体何をやっているのか。

販売するコーヒー豆に適した焙煎プログラムまで提供

 Bellwether Coffeeは当然、メーカーとして焙煎機の「モノの価値」を顧客に提供しているが、それだけではない。複数の「サービス」要素を付加することで顧客価値を高めている。そのサービス要素とは、主に焙煎レシピの提供とコーヒー農家から公平な価格で豆を調達する持続可能なサプライチェーンという2点がある。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。