日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を読み解く連載。今回は、早急な対応が必要なものの、いまひとつ有効な戦略のイメージが湧きづらい企業の脱炭素化について、身近なダイエットに例えて考えてみた。そこから見えてきた2つの成功ポイントとは?
気候変動問題は今、企業の最重要課題となっている。世界経済フォーラムが公表した「グローバルリスク報告書」によると、今後10年間で発生する可能性が高いグローバルリスクは、2011年以降、環境リスクが上位を占める傾向にある。
その背景には、地球温暖化がもたらす様々なリスクの増加がある。大気中の温暖化ガス(GHG)濃度が高まり、地球の平均気温が上昇することで降雨パターンが変動し、異常気象の発生頻度が高まっている。世界各地では、集中豪雨や熱波といった異常気象が発生し、地球温暖化が進行することで極端現象の頻度や強度が増大する可能性が予測されている。
そこで、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年に公表した「1.5度特別報告書」において、気温上昇幅を1.5度に抑えるためには、2050年までに二酸化炭素(CO2>)の正味排出量をゼロにする必要があることが示された。足元では主要国の気候変動目標は、2度から1.5度に収れんしつつある。
日本においても、20年10月に、2050年カーボンニュートラル宣言が表明され、21年4月に開催された気候変動サミットでは、国内の目標が、「2030年度に13年度比46%削減」と大幅に引き上げられた。そして、実現に向けては、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定された。電力部門では再生可能エネルギーを最大限導入する方針が、非電力部門では電化の他、電化が難しい熱エネルギーには水素など脱炭素燃料の活用、化石燃料利用に伴い発生するCO2の回収・再利用が検討されている。特に、産業部門の熱需要に対する脱炭素化は容易ではなく、課題となっている。
日本の脱炭素戦略をダイエット手法に例えると
ここまで、日本の脱炭素目標や達成に向けた戦略の概要、また気候変動問題に取り組む背景などを紹介してきた。しかし、最終ゴールは2050年という遠い未来の話であり、検討中の技術領域も水素やCO2の回収・再利用など、まだ普及しているものが少なく、イメージが湧きづらい側面もあるだろう。そこで、日本が目指す脱炭素戦略の内容を身近に感じていただくために、恐らく誰もが一度は経験したことがあるダイエット手法に例えて、解説してみよう。
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