日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が、アフターコロナ時代のデジタルトランスフォーメーション(DX)を読み解く人気連載。今回は、初めてのオンライン開催となった「CES 2021」で各社が発表した未来ビジョンを読み解く。

完全オンラインで開催されたCES 2021。そこで語られた未来ビジョンとは?
完全オンラインで開催されたCES 2021。そこで語られた未来ビジョンとは?

 2021年1月、「CES 2021」が開催された。世界最大級の最新テクノロジーの見本市として知られるCESは、その年のトレンドの行方を占う場として世界各国から注目されている。

 今回は初のオンラインでの開催となり、20年より出展企業数、来場者数(登録者数)が減少する中で、新しい技術的要素や製品の発表がやや少なく、盛り上がりに欠ける結果となった印象はある。一方で、コロナ禍において、技術よりもむしろ「企業はどのようにあるべきか」という各社の姿勢、いわば「哲学」が多く示されたと感じる。その意味では、今後の世界がどう変わっていくのか、より長期的なビジョンがにじみ出た場になったといえる。

 例えば、サステナビリティーに対する考え方は、各企業でよく語られるテーマとなった。世界的な脱炭素の流れが明確になる中で、企業がそれぞれの立場からどのような社会的役割を果たしていくのか、より具体的な議論がなされていた。

 自動車業界においては、米ゼネラル・モーターズ(GM)が、講演で新たなEV(電気自動車)マーケティング・キャンペーンである「Everybody In」を発表。25年までにEVおよび自動運転の製品開発に270億ドル(約2兆8000億円)を投資し、25年末までに世界で30車種の新型EVを発売することなど、脱炭素化に関する重要なアプローチの1つであるEVの普及に向けてリーダーシップを担う意思を示した。また、新たな電池技術「Ultium Battery」システムといった技術面を強調し、EV普及実現に向けた具体策を挙げたことで変化の加速を感じさせた。

米ゼネラル・モーターズが発表した「Everybody In」のイメージ(写真/ゼネラル・モーターズ)
米ゼネラル・モーターズが発表した「Everybody In」のイメージ(写真/ゼネラル・モーターズ)

 サステナビリティーというと、かつては環境問題に限定して論じる向きもあったが、今日ではESG(環境・社会・企業統治)投資の拡大などにより、日本でもサステナビリティーの多義性は理解されるようになってきた。スマートシティの文脈では、AI(人工知能)やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などの新しい概念、社会システムと、既存の都市をどうつなげるかは、ここ数年で大いに議論されてきた。これに加え、「持続可能なスマートシティ」をつくるためには、例えばサイバーセキュリティーに関する議論などは非常に重要だ。

 その意味で、CES 2021での米マイクロソフトの講演は、非常に示唆に富んだものになった。同社のブラッド・スミス社長は、『ウォー・ゲーム』という冷戦期の映画を引き合いに出し、国家の安全保障レベルでのサイバーセキュリティーの重要性を紹介した。この映画は、サイバー攻撃により核戦争が引き起こされるという筋書き。これをキャンプ・デービッドで見たレーガン大統領(当時)が、側近に「この映画のようなことが現実に起こり得るか」と聞いたところ、「問題はお考えになっているよりも深刻です」と側近は答えたという。この15カ月後に、レーガン大統領はサイバーセキュリティーに関する初めての国家安全保障令(“National Policy on Telecommunications and Automated Information Systems Security”)を打ち出すことになる。

 そして現在のサイバー攻撃の例としては、ネットワーク管理ソフト大手の米ソーラーウインズの例が紹介された。同社は20年12月にサイバー攻撃されたことを発表した。多くの大手企業や、米国の軍や政府機関が被害に遭った可能性があるとされ、大きな問題となっている。このように、現代において世界中に張り巡らされている「テクノロジー・サプライチェーン」が、大規模で無差別な攻撃に遭った場合、人々はどのように対処すればいいのか。この視点は、今後世界の重大な課題となる。

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