大量生産、大量消費、大量廃棄から、限りある資源を循環する「サーキュラーエコノミー」へ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて再び急増している使い捨てプラスチック問題に、企業はどう立ち向かうのか。日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が、アフターコロナ時代のデジタルトランスフォーメーション(DX)を読み解く。

「サーキュラーエコノミー政策」という、EU(欧州連合)の産業政策が今、世界で注目を集めている。大量生産・大量消費・大量廃棄という従来の線形経済を見直し、資源の有効活用に向けたビジネスモデル(日本が以前から実施している「3R」に加え、製品のサービス化、シェアリングサービスなどの新たなビジネスモデルを含む)に転換することで、資源制約と切り離した経済成長を目指す政策だ。
欧州委員会は2015年に「サーキュラーエコノミーパッケージ(CEP)」を発表した。その後、プラスチックについては「EUプラスチック戦略」「EU使い捨てプラスチック製品に関する指令」を成立させ、2020年3月11日には新たに「サーキュラーエコノミー行動計画」を発表し、より幅広い産業分野で加速させる方針を示した。この行動計画が対象とする産業分野は7つ。電子機器・ICT、バッテリー・自動車、容器包装、プラスチック、繊維、建設・建物、食料・水だ。
新型コロナで遅れる、使い捨てプラスチック規制
一方、使い捨てプラスチックに関する規制は、足元で遅れが生じている。英国はEUが定める使い捨てプラスチックに関する規制を1年前倒しし、20年4月からプラスチック製ストロー、マドラー、プラスチック軸の綿棒などの販売禁止を宣言していたが、20年10月まで延期すると発表した。イタリアはプラスチック税の賦課を20年7月から21年まで延期することを決めた。他のEU加盟国のプラスチック政策にも影響を与える可能性が懸念されている。
その背景にあるのが、新型コロナウイルスの感染拡大である。衛生面への配慮が優先され、医療現場では使い捨てのプラスチック製手袋やマスク、防護服などの需要が増加。小売店舗では感染予防策として個包装や抗菌フィルムシートなどの需要が増えている。ステイホーム、在宅勤務が広がったことにより、家庭ではEC(電子商取引)や中食向けサービスの利用が伸び、使い捨てプラスチック容器包装やカトラリーの消費が増加している。
本稿では、コロナ危機以降、使い捨てプラスチックに関する企業の資源循環ビジネスがどのように変化していくのかを考察してみたい。
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