日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部が、アフターコロナ時代のデジタルトランスフォーメーション(DX)を、全産業で読み解く連載。第2回は、移動の未来を考える。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、世界各地で移動が制限される中、求められているのは「よりよい復興(=BBB)」という価値観だ。

新型コロナウイルスによって、移動の価値観はどう変わったのか(写真/Shutterstock)
新型コロナウイルスによって、移動の価値観はどう変わったのか(写真/Shutterstock)

 「ビルド・バック・ベター(BBB)」というキーワードがある。災害発生後の復興段階において、次の災害発生に備えてより強靱(きょうじん)な地域・社会を形成するという考え方だ。最近、コロナ後の社会を考える指針として改めて注目を集めているが、新型コロナを踏まえた中長期的な移動の変化を考えるに際しても重要な意味を持つ。個人や企業、社会の実情を踏まえた移動のBBBとは、どのような形になるだろうか。

 新型コロナの感染拡大を受け、生活のあり様は一変した。感染拡大防止の観点から移動が制限され、ビジネスの在り方が大きく形を変える中で、コミュニケーションのデジタル化、サービス・モノ提供の非接触化、製造現場の省人化・合理化という3つのシフトが加速している(関連記事「アフターコロナ時代に加速する『3つのシフト』 DBJの視点」)。

 第一歩としてリモートワークに取り組む企業も増えている。当然ながら、不便のない理想的なインフラ環境が整っているケースは極めてまれであり、現実的には業務効率を踏まえた体制も考えなければならず、国内では緊急事態宣言が解除されて以降、従来の勤務形態に戻った企業もあるかもしれない。しかしながら、実践から得られた新たな働き方の長所と短所は、将来のDXに向けた大きな学びとなるだろう。

移動の集積地だった不動産は今

 新型コロナがもたらす経済被害は甚大だ。人の移動や客足の有無が直接業績に影響するサービス業に加え、グローバルに展開する自動車産業などもサプライチェーン断絶のリスクが顕在化した。新型コロナの感染拡大はさまざまな波及経路から経済に影響を与えているが、根本的な原因の一つには感染リスクに鑑みた「移動」と「集積」の制約が存在する。

 経済活動には必ず、人・モノの移動と集積が伴う。その集積の受け皿として各種不動産が機能していたが、今回の新型コロナの影響はその様相を一変させた。既存のオフィスにおける集約的な働き方は減少し、移動と宿泊を伴う旅行などについては甚大な需要減に直面している。

 こうした動向は新型コロナを受けた一時的な影響であると考えられる一方、今後、不測の事態が再び発生する可能性は否定できない。これを見据え、人の集積を過剰に制限することなく、早期復旧を見据えた最適な場所・不動産の在り方が議論されている。

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