国内外の経済・金融や設備投資動向、新型コロナウイルス危機を踏まえ各産業で起こっている新たな動きなどについて調査を行う、日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部によるアフターコロナ時代を見据えた全産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の焦点を追う新連載。第1回は、新型コロナ禍を受けて加速する「3つの社会変化」を解説する。

アフターコロナ時代に向けた3つの社会変化とは?(写真/Shutterstock)
アフターコロナ時代に向けた3つの社会変化とは?(写真/Shutterstock)

 新型コロナウイルスで経済の冷え込みが懸念されている。その中で、多くの業種が知恵を絞り、次のビジネスへの足がかりをつかもうとしているが、今後も、しばらくは新型コロナの感染リスクに対してセンシティブにならざるを得ない状況は続くだろう。このような状況下では、例えば国内外の移動については注意して行わなければならず、緊急事態宣言が解除されたからといって、新型コロナの問題が起こる前のような経済状態がすぐに戻ってくることは考えにくい。

 一方、新型コロナでの自粛をきっかけにして、社会には大きな構造転換が生じている。その変化は大きく分けて3つある。「(1)コミュニケーションのデジタル化」「(2)サービス・モノ提供の非接触化」「(3)製造現場の省人化・合理化」である。いずれも、新型コロナ危機前からあったトレンドではあるが、今回それが一気に加速するとみられる。一つ一つ見てみよう。

新型コロナ禍による3つの社会変化(日本政策投資銀行作成)
新型コロナ禍による3つの社会変化(日本政策投資銀行作成)

「非対面コミュニケーション」に慣れ始めた人々

 従来、企業間のコミュニケーションは対面で行うのが一般的だったが、筆者の周りでも在宅勤務に伴い、ZoomやGoogleハングアウト、Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツールを利用することが極めて一般的になっている。もちろん、新型コロナ問題以前もこのようなツールは存在していたが、これまで特に大企業に顕著に見られた傾向として、「やっぱり会議は直接顔を合わせて話さないと」と、対面せずコミュニケーションをすることに心理的な抵抗感があった。しかし、ビデオ会議ツールを使うことを余儀なくされてしばらくして、このような抵抗感はだいぶ薄まってきているように感じられる。

 大学でも各大学や予備校などがオンラインでの授業を展開し、テレスクールも試行錯誤を繰り返しながら徐々に浸透し始めている。また、オンラインや電話での遠隔診療が世界的に解禁される中で、日本でも従来は難しかった初診からのオンライン診療も解禁され、現在恒久化に向けた議論が始められている。

ビデオ会議ツールによるコミュニケーションが常態化しつつある(写真/Shutterstock)
ビデオ会議ツールによるコミュニケーションが常態化しつつある(写真/Shutterstock)

 もちろん製造業の現場など、テレワークでは対応できない業種・職種はあるし、全てがテレワーク化されるというのは極端だ。しかし、テレワーク率が高まる傾向は、新型コロナ危機を脱した後でも変わらず続くだろう。一度便利さを体験した後は、人は容易に不便な世界には戻れない。また、海外を含めて相手方がビデオ会議ツールを使っているのなら、自社だけツールの利用を取りやめるような理由もないだろう。通勤や移動を意識しなくてもよくなったことで、打ち合わせの予定は圧倒的に組みやすくなり、生産性は変わらない、または上がったという実感が伴っている。

 一方で、このような社会の変化に応じて、これまでにはない問題も生じている。例えばテレワークにおいては、小さな子どもが家にいる場合には集中して作業をすることが難しく、場合によっては会議を妨害されることがある。このような場合には、例えば近郊に時間貸しの部屋をレンタルできるサービスなどがあれば、需要はあるかもしれない。テレスクールにおいても、学生向けのオンライン教材や進捗を教師がモニタリングし、レベルに応じて適切な課題を設定できるツールなどが必要だ。社会の変化における新たな課題には、ビジネスチャンスが広がっている。

 なお、コミュニケーションのデジタル化に伴い、これまでオフラインで行っていたコミュニケーションがデジタル化されると、通信トラフィック量は増大する。海外でも新型コロナ危機前と比べて20~30%程度の通信トラフィック量の増加が見られる。米通信会社のAT&Tによれば、20年2月末と比べて4月末時点のトラフィック量は22%増加している。日本でもこのような状況が加速していけば、いずれは一部の通信設備は増強の必要性や、データセンターなどの需要が増大する可能性がある。

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