東京・渋谷の「SHIBUYA109」で、計1万人以上の若者と向き合ってきた、Z世代の専門家であり代弁者の長田麻衣氏。109を運営するSHIBUYA109エンタテイメントの研究機関、SHIBUYA109 lab.の所長を務める同氏が「生の声」にこだわり続ける理由とは。

※日経トレンディ2023年6月号より。詳しくは本誌参照

ダミーダミー
SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏

 東京・渋谷。ファッションビル「SHIBUYA109」の前に立つと、客層が10代からその母親の年代までと幅広いことに気付く。1990年代にギャルの殿堂だった建物の来場者は、近年は思い思いのファッションに身を包む。「今の109は食、コスメ、ファッション、“推し活”など、あらゆるトレンドの発信地。流行に敏感で消費意欲が旺盛な15〜20代前半の女性が主なターゲットです」。そう話すのは、この施設を運営するSHIBUYA109エンタテイメントの研究機関、SHIBUYA109 lab.(以下、109ラボ)の所長、長田麻衣だ。

SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏
SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏
SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣氏
1991年、東京生まれ。2014年、学習院女子大学国際文化交流学部卒、マーケティング会社入社。17年SHIBUYA109エンタテイメントに転職。マーケティング担当としてマーケティング部の発足に携わり、翌18年に109ラボを設立。所長に就任

 109ラボでは若者の生活実態の研究をマーケティングに役立てるとともに、若者の消費動向に関する情報を他社へ提供している。109のターゲットが10〜20代後半のZ世代と重なることから、長田はその専門家として知られ、テレビ番組のコメンテーターも務める。自身、「若者を理解する圧倒的な第一人者でありたいと思います」と明言する。

 実際、2017年の入社以来、長田は「強い覚悟を持って」若者と向き合ってきた。その数は毎月約200人、計1万人以上にのぼる。常に貫いているのが「生の声を聞き込む」姿勢だ。

 「ビッグデータや定量的なネット調査では捉えられない、若者たちの熱量が伝わるからです。そこにリアルがあります」と長田は強調する。

 Z世代の理解には、マスとして捉えるのではなく、小さなコミュニティーの集合と認識することが肝要だという。そこから最近浮上してきたキーワードが「界隈消費」。界隈とは同じ趣味の持ち主同士のコミュニティーを意味する言葉で、コロナ禍で友達を大切にする意識が高まる中、ますます重要性を増してきた。

 調査をする際に気を付けるのは、「会話の奥底にひそむ『真実』を探り当てること」と長田は言う。「今の子は、“いい子”なんです。人との調和を重んじて、本音を隠すことがある。だから言葉を鵜呑みにせずに、発言中の表情や間を観察するよう心掛けています」。さらに「若者と同じ目線で向き合う誠実な姿勢」を忘れてはならないという。「若者の声をかみ砕いて大人に伝えるのが私の仕事。そのときに若者を裏切ったり、利用したくはありません。大人と若者をつなげることで、世界が良くなるように願っています」

 長田の調査対象は基本的に109の顧客だが、その中心層が「首都圏の平均的な家庭の若者」なので、おのずとZ世代の典型的な意見が集まる。近年は、ファッション、食、文化などに限らず、社会や政治への関心も調査テーマに加えている。

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