おかず1品だけのシンプルな弁当が大ヒット。ローソンストア100運営本部 統括部長の林弘昭氏が着想したのは、11年も前だった。約10年もの間、なぜ諦めなかったのか。その想いの源流を聞いた。

※日経トレンディ2022年2月号の記事を再構成

 “おかずは1つだけ”の潔い弁当が、ローソンストア100で大ヒット中だ。ウインナーだけの「ウインナー弁当」が2021年6月末の発売から5カ月強で約67万食を売り上げ、同社の弁当の販売記録を大きく更新。第2弾の「ミートボール弁当」は11月10日に発売し、1カ月で約20万食を売り切った。どちらも1個200円(税別、以下同)と求めやすいのも魅力だ。

 “だけ”弁当の大躍進には、発案した当人である同社運営本部 統括部長の林弘昭も「本当にびっくり」と驚く。「コンビニ業界では1店平均で1日5個も売れれば大ヒットですが、ウインナー弁当は2桁売れる店が続出。ミートボール弁当はウインナーの3倍ペースで売れ、相乗効果でウインナーも再び盛り上がりました。看板商品になるよう、ロングセラーを目指しています」と林は満面に笑みをたたえる。

21年11月発売の第2弾「ミートボール弁当」はデミグラスソースとの相性もバッチリ。女性も多く取り込み、「ウインナー弁当」を上回る売れ行き
21年11月発売の第2弾「ミートボール弁当」はデミグラスソースとの相性もバッチリ。女性も多く取り込み、「ウインナー弁当」を上回る売れ行き

 林が長寿商品にこだわるのは、ローソンストア100という店の特徴と密接に関わる。同チェーンは利便性と低価格を兼ね備えた“コンビニ版100円ショップ”というイメージが強いが、もともと生鮮食品も扱っており、ミニスーパーの役割も果たしてきた。21年7月から「献立応援コンビニへ。」をコンセプトに掲げ、「商品をパッと見て、その日の献立が短時間で思いつく品ぞろえ」を店づくりの基本としている。「通常のコンビニのように話題性のある新商品に飛び付くお客様は多くないので、一発花火のような商品はさほど重要ではありません。日常的な需要があり、リピート来店のきっかけになることが大事なんです」と林は明かす。

ローソンストア100の集客の柱である野菜や果物の売り場に、自ら磨きをかける
ローソンストア100の集客の柱である野菜や果物の売り場に、自ら磨きをかける

 林の口調は、しばしば感慨深げになるが、それも無理はない。彼が“だけ”弁当を着想したのは、実に11年も前だった。「ウインナーもミートボールも弁当の常連おかずだけど、脇役的な存在。もっと入れてほしいと思っていました」。そんな思いを込めて社内で提案したが、「弁当の顔にならない」と却下された。「弁当は主菜、副菜、漬物がそろい、見た目のバランスが取れているのが王道だという、暗黙のルールがありました。ウインナーは主役になれないし、しかもそれのみというのは『常識ではあり得ない』と判断されたのです」と林は振り返る。

 しかし、林には勝算があった。約20年にわたり一貫して店舗運営畑を歩み、顧客の購買行動をつぶさに見てきたからだ。ミニスーパー的な性格を持つ同チェーンでは、普段からウインナーやミートボール、そして即席ご飯を買う客が多かった。「おそらく自宅でそれらをおかずにご飯を食べられているのでしょう。そんな客層なら、ウインナーやミートボールの弁当を受け入れてくれるはず!」と確信していた。

 200円という価格は、死守すべき一線だった。同チェーンには以前から200円弁当のラインアップがあり、「ひじきご飯弁当」が長らく人気1位だった実績がある。何よりもこの価格なら、「買い合わせ効果」を期待できる。通常のコンビニの場合、高付加価値の弁当を高い価格で売れる。しかし単品の価格を抑えているローソンストア100では、買い合わせを促進して客単価を上げる戦略をとっていた。「弁当が200円なら、カップ麺、総菜、飲料と一緒に買っても500円のワンコインで収まる。組み合わせやすい重宝な商品にするのは必須」と林は見定めていた。

「継続は力なり」が座右の銘と話す林氏
「継続は力なり」が座右の銘と話す林氏
ローソンストア100 運営本部 統括部長 林 弘昭氏
1978年、千葉県生まれ。敬愛大学経済学部卒。2002年、九九プラス(現ローソンストア100)入社。06年、バリューローソンに転職。09年に九九プラスがバリューローソンを吸収合併後も運営畑一筋。関東運営部長などを経て、21年9月から現職

 そもそもローソンストア100は、一般的なコンビニに比べ、店の規模、店舗数ともに小ぶりだ。関東、近畿、中部に約670店(21年11月末現在)を展開。ローソンの約1万4000店と比べると、数字の差は歴然だ。それだけに「どこにでもある弁当を並べても仕方がない。他社がやりたくてもやれない方向性を狙おう」と腹を決めていた。商品開発の“門外漢”だったから、「掟破りの発想ができた」と林自身は分析する。

 発売までの約10年間、林は諦めずに提案を繰り返した。関西に赴任していた16年には商品開発担当者を説き伏せて日の目を見る寸前までこぎ着けたが、関東に戻ることになって頓挫。しかし20年、チャンスが再び巡る。関西時代に賛同した担当者が関東に異動になったので、改めて企画を実現させた。

 もちろん価格が200円だからといって、妥協はしなかった。米飯にかけるゴマ、ウインナーの皮のパリッとした歯ごたえ、そしてケチャップの味付けは譲れなかった。第2弾のミートボールでも、みっちりとした食べごたえとデミグラスソースの味付けを追求した。「カギはやはり、懐かしい母親の味です」と林。コストを抑えるために弁当のフタはラップとし、ご飯とおかずを分けるバランも挟まなかった。ウインナーやミートボールが転がらないように、下に少量のパスタを敷いた。

 爆売れするきっかけは、ツイッターだった。発売当日に購入者が「噓みたいな弁当があってつい買ってしまった。おいしかった」という内容をつぶやき、反響が広がった。当初は関東限定での発売だったが、2カ月後の20年8月には全国に拡大。さらに21年秋には、ローソンも独自に開発した200円のウインナー弁当を関東で販売した。

「『継続は力なり』を実感しました。この言葉は、私の座右の銘でもあります。絶対に売れると信じていましたが、諦めたらそこで終わりですからね」と林はしみじみと語った。

ヒットの履歴書

2017年 100円「具のせおにぎり」シリーズ人気が加速
2017年 100円「具のせおにぎり」シリーズ人気が加速
価格を100円に収めるために、自社でほぼ常時採用していたチキンカツに着目して発案。大きな具材をおにぎりにのせ、卵でとじたチキンカツ丼の味わいを楽しめる「チキンカツ丼風おにぎり」は、同社の「具のせおにぎり」シリーズの人気を牽引するヒット商品になった
2019年 滋賀県の「サラダパン」がヒント 目を引く特設コーナーで展開
2019年 滋賀県の「サラダパン」がヒント 目を引く特設コーナーで展開
滋賀県の人気ご当地パン「サラダパン」をリスペクト。「たくあん入りのパンを自分たちで作ろう」という発想から生まれた「たくあんマヨロール」。特設コーナーでも展開し、計画の2倍売った
2020年 子供時代の思い出のご当地グルメを商品化 大々的な特設コーナーで1日50個超売る店も
2020年 子供時代の思い出のご当地グルメを商品化 大々的な特設コーナーで1日50個超売る店も
林氏発案のご当地パンシリーズの続編は、父親の出身地・群馬県の名物で、甘じょっぱいみその味が後を引く「みそぱん」。林氏の子供時代の思い出の味だ。生地は“本家”とは異なるコッペパン風にして発売。多い店で1日50個超も売れた
2021年 子供時代の「ウインナーをもっと」を実現 添え物を主役にした“だけ”弁当シリーズ第1弾
2021年 子供時代の「ウインナーをもっと」を実現 添え物を主役にした“だけ”弁当シリーズ第1弾
弁当の添え物的存在になりがちなウインナーに主役を張らせて大ヒット中の「ウインナー弁当」(200円)。シンプルな構成がカップ麺などとの買い合わせを誘う。皮のパリッとした歯ごたえと薫製の香り豊かなウインナーへのこだわりは、林氏が子供の頃から親しんできた「シャウエッセン」などへの思い入れにも由来

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