1990年代からの“ギャルの聖地”を一新した「SHIBUYA109渋谷店」。2019年にリニューアルし、19年度の入館者数は過去最多を記録。今も若年女性に愛され続ける秘策を、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が伝授する。
※日経トレンディ2021年2月号の記事を再構成
1979年の開業以来、若い女性に向けて情報を発信してきた東京・渋谷のファッションビル「SHIBUYA109」。開業40周年に当たる2019年には、大規模リニューアルを実施し、食やエンタメ関連のフロアを充実させ、“テーマパーク色”を強めた。これが功を奏し、20年3月には新型コロナの影響を受けていたにもかかわらず、19年度の入館者数は過去最多を記録。売り上げもリニューアル前より伸長した。
「『〇〇離れ』とか言って、若者が消費しないことを嘆く大人がいますが、実はそんなことはありません。離れられているのは、その分野が若者を捉えられていないからだと思います」
そう言い切るのは、109を運営するSHIBUYA109エンタテイメントの研究機関、SHIBUYA109 lab. 所長の長田麻衣だ。彼女の組織は、109のターゲットであるアラウンド20(15~24歳)の男女の実態を調査し、同社のマーケティングをサポート。他社へも情報を提供し、消費マインドが見えにくい時代のビジネスを支える、若者マーケの専門家だ。
“食べ歩き”をコンセプトにした食のゾーン「MOG MOG STAND」を開設する際には、「若者の楽しみ方に“映え”は必須。フォトスポットの設置が有効です」と提案。その結果、デコラティブな「映え壁」を背景に人気のいちご飴や韓国フードを撮影する女性が続出する目玉フロアとなった。
若者の動向を探るため、長田は館内での聞き取りやグループインタビューなどを積極的に行い、1カ月平均約200人に接する。LINEでも約500人の若者とつながっており、「量的には日本一の若者研究機関です」と自負する。
「若い女性にとって、今やファッションはコミュニケーションツール。会う仲間や場所など、“コト”に合わせて使い分けているので、好きなブランドを聞いても『特にない』と答える子が多いんです」と長田は指摘する。
そんな長田によれば、今、大人が注目すべき若者のトレンドは、「ヲタ活(ヲタクの活動)」だという。
「対象はアイドル、アニメ、コスメ、食と、趣味の領域であれば、何でもあり。仲間とコミュニティーをつくり、ツイッターなどで互いに自己表現し合うのが、今のヲタクです」。実際、109に来るアラウンド20女性の7割以上が自分を「○○ヲタ」だと自認し、SNSで公開しているという。かつての暗いイメージの「オタク」とは違い、明るくポジティブなのが今流のヲタク。「いわゆる応援消費です。今の子たちが小さい頃からAKB48が活躍していたりして、誰かを応援することを当たり前に感じている世代なのでしょう」と長田は分析する。ヲタ活に年間15万円以上かける人も珍しくない。
20年11月には都内のホテルと共同で、10〜20代向け企画の一環として、ヲタ活宿泊プランも実現させた。その名も、SNSの流行語から取って「#推ししか勝たん」(推しが最高の意)。コロナ禍で集客に苦慮するホテルを支援する目的もある。大型プロジェクターやペンライトなどの応援グッズを用意して、仲間とヲタ活を楽しむ場を提供する。「コロナ禍でライブに行けなくても、特注ケーキを買って推しの“生誕祭”を祝ったり、ヲタグッズを手作りしたりと、若者は楽しみ方を見つけている」と長田。予約が好調に入り、インスタでも話題を呼んでいる。
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