※日経トレンディ 2020年6月号の記事を再構成

新型コロナウイルスの感染拡大を期に、チャットツールをベースとした業務スタイルへ切り替えた企業は少なくない。しかしそこで多くの人が痛感しているのが、従来のビジネスコミュニケーションの手法が通用しにくいことだろう。では我々は何をよりどころにすれば良いのか。そのヒントを『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』(宣伝会議)の著者である橋口幸生氏が明かす。

『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』(宣伝会議)
『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』(宣伝会議)

テレワークの時代になり、重要なことを対面で直接話さなければならないという常識が崩れ去ろうとしている。日本企業はこれまで、商談にしても社内会議にしても、会話の微妙なニュアンスやその場の空気をくみ取ることを大切にしてきた。

 しかし、これからは「ロジック」や「ファクト」が重視される時代だ。ビデオ会議があるとはいえ、大半の時間をビジネスチャットによる言葉のキャッチボールに費やすことになり、世の中は書き言葉で回っていく。もはや調整や忖度に頼っていては、コミュニケーションは成り立たない。

 そのためには、短く端的な文章を書く「言葉ダイエット」のスキルが求められる。チャットにしろメールにしろ、相手への行き過ぎた気遣いや配慮から、やたらと言葉を書き連ねるのは論外といえる。一例を挙げると「お打ち合わせをさせていただければ幸いと存じます」といったものだ。一見敬語のようだが、本質的には相手に嫌われたくないという思いから生まれた「卑屈語」。決してコミュニケーションを円滑にするために忙しい相手を敬った文章とはいえない。大事なのは、伝えたい内容なのだ。

 もちろん、やたらと横文字を多用しながら実は内容が薄っぺらい文章もダメな典型。私はこれを「企画書文学」と呼んでいる。新人コピーライターが習う“いろは”に、「相手は自分の文章に全く興味が無く、そもそも読んでもらえないことを起点に考えよ」というものがある。チャットでも同じだ。

 伝えづらい内容ほどシンプルに、そして大切な話ほど冒頭に。科学的かつ論理的思考で文章を書けない人は、今後は活躍が難しい時代になっていくのではないだろうか。

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