※日経トレンディ 2020年6月号の記事を再構成
テレワークを始めてみると、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションや自己管理の難しさに気付く。“あうん”の呼吸が通用しないのが在宅勤務。仕事のパフォーマンスを落とさないための10の鉄則を紹介しよう。『アフターデジタル』共同著者の尾原和啓氏、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所代表弁護士の藤井 総氏、そしてGMOインターネット会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏が語る。
「ビデオ会議はZoomで、チャットはSlackで」。テレワークを導入すると、スポットライトを浴びるのはまずツール群だ。しかし離れた場所で働くための道具を手に入れただけでは、単に環境が整ったにすぎない。道具を使いこなす知恵が求められる。
必要なのは「ルール(鉄則)」だ。テレワークをいち早く導入した3人の達人に、自宅で効率的に仕事をする鉄則を聞いた。
【2】“舞台づくり”が8割
【3】議事録・進行ルールづくりをお忘れなく
【4】周りの気配を読まない
【5】みんなの心理的安全性を担保する
「舞台づくり」を大切に
鉄則は、大きく分けて2つ。チームとして円滑に仕事をこなすための「コミュニケーションの鉄則」、そして自分を律しつつ効率よく働くための「心構えの鉄則」だ。
まず、チームの鉄則からだ。これまでのように同じ場所にいるからこそ可能だった意思疎通の慣習は、この際忘れることが第1の鉄則だ。対面で当たり前にできていた「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を再現する仕組みづくりが欠かせない。
取り組むべきは「舞台づくり」だ。基本的なことだが、会議なら議事録を誰が付けてどのような進行でやるべきか決めておきたい。ツールに対する習熟度は人によってまちまちなので、コミュニケーションに支障があるメンバーに対して遠慮無く支援の手を差し伸べる努力もしたい。
例えばありがちなのが、有線イヤホンのマイク部がワイシャツのエリとこすれ合って他のメンバーがそのノイズに悩まされるケース。たとえ相手が上司でも、本人は気付いていないケースが多いのでやんわりと指摘してあげるべきだ。
「本当に大切なのは、“Do”ではなく“Be”」。5年前にインドネシアやシンガポールに拠点を移し、以来“リゾートワーカー”を自認して世界を飛び回るIT批評家の尾原和啓氏は、テレワークにおけるコミュニケーションの秘訣をこう話す。同氏が言うBeとは、会議を開くといった特定の目的のための行動(Do)ではなく、楽しく仕事をするための状態づくりを指す。
尾原和啓氏
リゾート地に身を置きテレワークを実践。早い段階からビデオ会議などを活用し、世界中のテクノロジー業界の識者たちと徹底的に議論を重ねながらテクノロジーの進化が世の中をどう変えるか日々研究している。IT大手各社のワークスタイルやツール活用に造詣が深く、「DoよりBe」などテレワーク時代における新しい働き方のセオリーにも一家言ある。京都大学大学院工学研究科修了。NTTドコモ、リクルート、Google、楽天など、14回の転職を経験。2015年にIT批評家として独立。インドネシア・バリ島やシンガポールを拠点に活動。『アフターデジタル』(日経BP)などベストセラーも多数
具体的な実践方法としてはチームワークを深めたり、ふとしたアイデアを出したりしやすくするための場を設ける。オフィスで働いていると上司や同僚の働きぶりといった気配を感じられるので、仲間の様子を知り軌道修正しながら仕事ができる。テレワークになると、部署メンバーの“空気”が読めなくなる。
尾原氏が勧める方法が、チャットサービスなどを使って、雑談のための掲示板を設けることだ。対面で行っていた何気ない会話をバーチャルの場でも実現するのである。
雑談を意義のある方向に導く秘訣は大きく3つあるという。「マイクロインタレスト(ちょっとした興味)」「自己開示(弱みをさらけ出す)」、そして「コミットメント(当事者意識)」だ。
ホウレンソウばかり続けていると、コミュニケーションは堅苦しくドライになりがち。「すると、心理的安全性が担保されずに部署メンバーの間に自然に心の障壁が生まれてしまう。結果としてチーム内の信頼感が損なわれてしまう」と尾原氏。壁を壊すための工夫が求められるというわけだ。
意識的に価値観の違う人と話す機会をつくることを、「カジュアルコリジョン」と呼ぶ。前出の3つのポイントを押さえてたわいもないことを言い合うと、カジュアルコリジョンを起こせると尾原氏は話す。
画面越しに一緒に食事を取る「Zoomランチ会」の開催もお勧めだ。テレワーク移行でビデオ会議システムZoomを使ったバーチャル飲み会が一部で流行しているが、同じように同僚と一緒にランチへ出掛ける感覚で昼の時間を共有するわけだ。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー