※日経トレンディ 2020年6月号の記事を再構成
働く場所がオフィスから自宅に変わると、気を配らなければならないのはネット環境。スピードが出ないばかりにビデオ会議で失敗することだけは避けたい。テレワークに適した無線LAN環境はどう整えればよいのだろう。
「社外との重要なビデオ会議中に映像や音声が途切れたらどうしよう」。そんな不安を抱えたままテレワークを続けるのは精神衛生上よろしくない。だったらこの機会に、家庭内ネット環境を“アップグレード”すべきだ。
幸い、無線LANの新しい高速技術である「IEEE802・11ax」(通称Wi-Fi6)が近く規格化されることを受けて、家電量販店には対応製品が続々と並び始めている。安いものなら1万円台とコストパフォーマンスも良く、今が買い時だ。「Wi-Fi6」のロゴが入ったものは業界団体が認定したものなので、どれを買っても安心である。
Wi-Fi6とは具体的に、従来の4倍のビットを同時に送るなどの工夫によって理論上の最大通信速度を9.6Gbps(ギガビット/秒)まで高めた通信規格。従来のIEEE802・11ac(通称Wi-Fi5)は6.9Gbpsだったので、1.4倍も高速化が図られたことになる。
庭でも30Mbpsを達成
では、実際のところWi-Fi6はどの程度の実力なのだろうか。都内の庭付き2階一戸建てで実験したところ、最大で3倍も速くなった。この家では200Mbps(メガビット/秒)のNTT東日本「フレッツ光」が引き込んであり、1Fの書斎の隣の部屋に「IEEE802・11n」(通称Wi-Fi4、最大で600Mbps)対応の無線LANルーターが設置されていた。実験では、これをバッファロー製の最新Wi-Fi6対応製品「WXR-5950AX12」に置き換えた。
最も効果があったのが、2階の角にある子供部屋だ。置き換え前は14.6Mbpsしか出ず、ネット動画を再生中に一瞬映像が止まることがあった。Wi-Fi6に更新した後は43.8Mbpsとなり、トラブルは起こらなくなった。屋外の庭も30.4Mbpsと1.6倍の高速化を達成。気分転換に、たまにはガーデンチェアでくつろぎながら仕事するのも“あり”になった。
Wi-Fi6にはテレワーク向きの特徴もある。「直交周波数分割多元接続(OFDMA)」という技術を採用したおかげで、多数のパソコンやスマートフォンが同時通信可能になることだ。家族全員が無線LANを併用する環境でも、スループットが向上しやすい。
ネットギアによるとWi-Fi6で4台を接続した環境下では、Wi-Fi5と比べて全体のスループットは4割程度向上するという。現在Wi-Fi4を使っているなら、さらなる改善が期待できそうだ。つなぐことができるパソコンやスマートフォンの台数を増やせるのもWi-Fi6製品の強みだ。NECプラットフォームズの「WX6000HP」の場合、36台までつなげる。同社のWi-Fi5製品では最大でも18台だったので2倍に増える。
近年オンラインサービスで高画質化が年々進み、例えば「YouTube」では4Kによる映像配信を提供中。その速度は、51Mbps。ビデオ会議「Zoom」は下りの速度は1.2Mbpsあれば十分だとされるが、会議中に家族の誰かが4K動画を再生し始めた瞬間、Wi-Fi4では家庭内ネットが一時的に“パンク”してしまう恐れがある。混雑に強い環境を整えておくことは、“巣ごもり”対策として意義が大きい。
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