一見魅力的な製品だが、果たして買って大丈夫といえるのか。製品チェックに秀でた識者が良しあしを一刀両断する。今回は、アイロボットの“2in1”ロボット掃除機を試した。

※日経トレンディ2023年2月号の記事を再構成

水拭き可能なロボ掃除機の「Roomba Combo j7+」（アイロボットジャパン）をテスト

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　2002年に初代モデルを発売して以来、ロボット掃除機市場をリードしてきたアイロボットジャパン（以下アイロボット）の「ルンバ」シリーズ。22年1月から9月までの国内ロボット掃除機市場における販売台数シェアは約72％（アイロボット調べ）と圧倒的だ。

　しかし最近は、中国メーカーを中心に、吸引掃除と水拭きに両対応した“2in1タイプ”が人気で、特に高級モデル分野ではルンバシリーズを脅かす存在になりつつある。アイロボットも以前から水拭き掃除ロボット「ブラーバ」シリーズを販売していたが、2in1はなかった。

　今回登場した「Roomba Combo（ルンバ コンボ） j7＋」（実勢価格15万9800円・税込み）は、アイロボットが満を持して市場投入した2in1モデルだ。アイロボットはこれまでも、Wi-Fi対応、マッピング機能などは他社に遅れて搭載していたが、やがて追いつきシェアを守ってきた。今回も先行する他社製2in1ロボット掃除機の課題を解決しているのではないかと期待が持てる。

　その課題を先に説明しておきたい。それは、フローリングとじゅうたんが混在する部屋をうまく掃除できないことだ。例えば、エコバックスの「DEEBOT」シリーズは、水拭き掃除用のモップパッド装着時にはじゅうたんの上を掃除できず、人がモップパッドを取り外す必要があった。ロボロックの「Roborock」シリーズは、じゅうたんの上を進む際にモップパッドを5ミリメートルほど持ち上げて掃除機で吸引する仕組みを備えるが、毛足の長いじゅうたんの場合、じゅうたんをモップパッドで汚してしまう恐れがあった。

ロボットメーカーならではのモップパッド着脱機構を搭載

　この課題を解決するためにルンバ コンボが備えたのが、可動式の「パッドリフティングシステム」だ。フローリング掃除のときは、モップパッドが本体上部に収納されており、水拭き掃除のときだけ本体下部に移動させる仕組みになっている。

　本体側面からアームが飛び出してモップパッドを動かす構造だが、家具などに引っかかるといった不具合がないのか最初は不安だった。しかし実際に使ってみると、フローリング上の見通しのよい場所で自動で着脱しつつ、着脱の直前に本体が軽く後退してモップパッドを迎え入れるような動きをして、省スペースで着脱しているのが分かる。このような細かい動作ができるのは見事だ。

床の種類に応じて自動で水拭き

取り付けやすいモップパッド（上）

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じゅうたんなどの掃除ではモップは上部に収納（上）。フローリングなどでは、モップが下部にあり水拭きしながら吸引（中）。床を認識し、モップが自動で底部に移動する（下）

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テストで使用した部屋（上）。アプリで水拭きした範囲を確認できる（下）

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　では、水拭き機能の性能はどうだろうか。水拭き掃除時には、タンク内の水を本体下部の3つの穴から滴下しながら掃除を進める。タンク容量は約210ミリリットルと競合より特に多いわけではないが、掃除直後の床はしっとりとしており、きちんと水拭きしたことが分かる。

　フローリングにクレヨンで軽く線を描き、同社の水拭き専用ロボットの「ブラーバ ジェット m6」と水拭き性能を比較してみた。ブラーバ ジェットは水を前方に噴射してから、本体前方の四角いモップパッドで拭く方式。クレヨンの汚れはどちらもある程度落ちたが、水分が豊富だったブラーバ ジェットの方がやや上と感じた。

ブラーバに及ばないが十分な水拭き

クレヨンの汚れはどちらもある程度きれいになった

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　またルンバ コンボは吸引掃除してから水拭きをするため、モップパッドを本体後面に配置しており、パッドの形状も弓形になっている。部屋の隅をしっかり水拭きしたいときは、パッドが四角形のブラーバ ジェットの方が有利だろう。

　一方、ブラーバ ジェットより魅力的に感じたのがメンテナンス性だ。ブラーバや他社の2in1タイプはモップパッドが本体下部にあり、パッドを着脱する際には本体を裏返す必要がある。しかしルンバ コンボは本体上部を少しめくるだけでモップパッドを着脱できる。装着もモップパッドの中央部分をスライドさせてから面ファスナーを取り付ける仕組みで、簡単にぴったり装着できる。