一見魅力的な製品だが、果たして買って大丈夫といえるのか。製品チェックに秀でた識者が良しあしを一刀両断する。今回は、ボウルを浮かせて調理するというオーブンレンジを検証した。
※日経トレンディ2022年10月号の記事を再構成
●本体サイズ・重さ/幅487×奥行き399×高さ370ミリメートル(ハンドル部分除く)・17.5キログラム
●庫内容量/26リットル
●庫内寸法/幅378×奥行き309×高さ201ミリメートル
●レンジ出力/最大1000W
●オーブン温度/100〜250度
●年間消費電力量/73.4kWh/年
調理家電の“主役”ともいえるオーブンレンジに、象印マホービン(以下象印)が17年ぶりに再参入した。2022年9月に発売した「EVERINO ES-GT26」(実勢価格6万5780円・税込み、以下EVERINO)だ。近年のオーブンレンジでは、庫内容量が30リットル前後で過熱水蒸気によるスチーム調理ができる上位モデルばかりが注目されている。また売れ筋といえるのは4万円以下の低価格モデルだ。しかしEVERINOはそのどちらでもない。庫内容量は26リットルで、スチーム機能はないミドルクラスのオーブンレンジだ。
EVERINOの参入の経緯について同社は、「暮らしに欠かせないアイテムである『レンジ』を、またラインアップに追加したかった。05年以前は単機能レンジを手掛けていたが、それでは差別化が難しい。そこで、3〜4人のファミリー層をターゲットに、独自性を出したオーブンレンジを企画した」(象印マホービン 技術開発室商品企画担当の稗田雅則氏)と説明する。
レンジ+グリルの合わせ技で調理時間短縮を狙う
とはいえ、容量26リットルのオーブンレンジも各社しのぎを削る激戦区だ。後発である象印は、各社の売れ筋モデルの機能や、クチコミサイトやSNSなどでの評判を徹底的に調査したという。その結果、力を入れたのが調理時間の短縮を狙う「レジグリ」機能だ。
通常は、電波(マイクロ波)を照射して温める電子レンジ機能と、庫内天面などのヒーターで焼くグリル機能は別々に使う。象印のレジグリ機能では、電子レンジで温めた後に自動でグリルに切り替えて焼き色を付けるなど、両機能を連携させることで調理時間を短縮する。この機能を搭載するために、付属の角皿は一般的な鉄製ではなく、レンジ利用が可能でマイクロ波を透過するセラミック製を採用している。
レンジ調理からグリルに自動で切り替えられる機能は三菱電機のオーブンレンジ「ZITANG RG-HS1」(17年発売)にもあったが、こちらは容量13リットルの小型モデル。26リットルクラスで搭載したのはEVERINOが業界初だ。
レジグリの時短効果がある料理の代表格がハンバーグ。レンジ加熱で中まで加熱した後、表面をグリルで焼くことで、より短時間で調理できる。実際にシャープの最上位機である「ヘルシオ AX-XA20」とEVERINOの2台で120グラムのハンバーグ2つを焼き比べてみた。どちらも内蔵メニュー「ハンバーグ」で調理したところ、基本的に過熱水蒸気機能を使用するシャープが約23分17秒かかったところ、象印は約13分で焼き上げられた。できたハンバーグの仕上がりも大差ないといえるレベルだ。シャープには副菜の同時調理ができるなどの利点はあるが、レジグリが時短になるのは間違いない。
他のメニューでも、ほとんどはレジグリの方が早く調理できたが、「鶏の照り焼き」では、シャープが約13分10秒で象印は16分15秒と、ややEVERINOが時間がかかった。レンジ加熱の時間が短い料理ほど、レジグリの時短効果が薄くなると感じた。
このレンジとグリルを組み合わせた調理機能の一つとして、揚げ物をおいしく温め直すという「サクレジ」も搭載する。市販の唐揚げやコロッケなどを角皿に載せて「サクレジ」ボタンを押すだけで、約6分間で衣をサクサク状態にして温められた。ただし、角皿にそのまま置く仕組みのため、天ぷらは落ちた油で裏面がべちゃっと濡れた感じになる。この点は、金網の上に置いて過熱水蒸気で温めるヘルシオの方が仕上がりが良い。
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