一見魅力的な製品だが、果たして買って大丈夫と言えるのか。製品チェックに秀でた識者が良しあしを一刀両断。今回は、手書きメモが取れる電子ペーパー「クアデルノ」の新版を評価した

※日経トレンディ2021年9月号の記事を再構成

電子ペーパーの「QUADERNO A5 (Gen.2)FMVDP51」(富士通クライアントコンピューティング)をテスト
電子ペーパーの「QUADERNO A5 (Gen.2)FMVDP51」(富士通クライアントコンピューティング)をテスト

 テレワークが進んだことにより、iPadやSurfaceなどのタブレットとペンを使う人は増えているはず。ただ、その書き味に100%満足している人は少ないのではないだろうか。そんな中、紙の代わりになりそうな有力製品「クアデルノ Gen.2」(富士通クライアントコンピューティング、以下富士通)が現れた。

QUADERNO A5 (Gen.2)FMVDP51(富士通クライアントコンピューティング)
実勢価格4万7780円(税込み)
●本体サイズ・重さ/幅173.2×高さ242.5×奥行き5.9ミリメートル・261グラム
●画面/10.3型16階調グレースケール電子ペーパー(1404×1872ドット)
●メモリー/32GB
●無線通信/IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0、NFC
●バッテリー駆動時間/最長2週間(Wi-Fi機能オフ時)

 「クアデルノ」は、2018年に第1世代が発売された時点で電子ペーパー(E Ink)ディスプレイを装備していた。E Inkは、バックライトを使わずに表示でき、目が疲れにくくて省電力という特徴がある。これが電子メモや電子書籍端末に向いているということで、多くの製品に使われてきた。しかし、サイズを大きくするとコストが跳ね上がり、CPUパワーが必要になるため、大きなサイズの製品が少なかった。20年7月発売で話題になった手書きメモ端末のキングジム「フリーノ FRN10」も、スマホより一回り大きい程度(6.8型)だった。

 そんな中、クアデルノはA5サイズ(10.3型)とA4サイズ(13.3型)と、よくあるノートと同じサイズで手書きもできる電子ペーパー端末ということで注目された。ただ、初代機は動作速度などに不満があり、筆者も購入したがメインでは使わなくなった。

 使い勝手を改善したという2世代目はA5サイズで4万7780円(税込み)、A4サイズで6万9800円(同)。高価に感じるかもしれないが、フリーノの実勢価格3万5020円(税込み)と比べると健闘していると思う。

ペンの充電が不要になり紙と鉛筆のような書き味に

 前モデルからの使い勝手のうえでの大きな変化は、充電式のペンから電池が不要なタイプのペンに変わったことだ。iPadなどでも、ペンのバッテリー管理はうまくいかないことが多い。充電を忘れることはしょっちゅうで、作業中にペンのバッテリーが切れることが多々ある。充電不要になっただけで、相当使い勝手は良くなった。

 それに加えて、新型クアデルノは前モデルよりも処理速度が上がり、書き味も向上した。アンチグレア(非光沢)タイプのE Ink画面にフェルト芯のペン先という組み合わせで、ややザラッとした紙に鉛筆で書いた感じに近い。デジタル機器に書いているという感覚がかなり少なく、自然な書き心地に仕上がっている。実際の鉛筆のように紙に押し付けて書くのではないため、軽い筆圧でもよりスムーズに書ける。個人的には紙と鉛筆よりも好きなくらいだ。この画面とペンの仕上げは、富士通がワコムと組んで開発していた教育向けタブレットなどで培った経験をベースにしているという。

 クアデルノの商品企画を担当した同社コンシューマ事業本部マーケティング支援統括部の松下季氏は「今回の製品をどういうものにするか、色々な方向性を考えた」と振り返る。それこそ、何でもできるAndroidデバイスにするか、サイズを変えるかというところから考えたそうだ。その結果「薄さ、軽さを維持したうえで、読む、書く、という基本性能の強化に特化することにした。初代機の書き味には納得していない部分があったので、ディスプレイ表面の仕上げやペン芯の素材などを何パターンも試作。iPadなどのタブレットに多いツルツルの書き味とは差別化したいという考えもあった」(松下氏)

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