一見魅力的な製品だが、果たして買って大丈夫と言えるのか。製品チェックに秀でた識者が良しあしを一刀両断する連載「ザ・ジャッジ」。今回は、1台で立体音響を体験できる、ソニーの高級スピーカー「SRS-RA5000」を試した。

※日経トレンディ2021年8月号の記事を再構成

スピーカーの「SRS-RA5000」(ソニー)をテスト
スピーカーの「SRS-RA5000」(ソニー)をテスト

 「Amazon Echo」などのスマートスピーカーによって、1台で全方位に音が出るスピーカーが市民権を得るようになった。ただコンパクトで便利な半面、音質が物足りないこともある。そこで期待できそうなのが、ソニーが2021年4月に発売した「SRS-RA5000」。同社の立体音響技術「360 Reality Audio」(以下、360 RA)を体験できるスピーカーだ。

SRS-RA5000(ソニー)
実勢価格6万6000円(税込み)
●本体サイズ・重さ/幅235×高さ329×奥行き225ミリメートル・4900グラム
●スピーカー直径/46ミリメートル×3(上向きスピーカー)、46ミリメートル×3(ミッドスピーカー)、70ミリメートル×1(サブウーファー)
●接続/Bluetooth 4.2、Wi-Fi、ステレオミニ端子
●対応コーデック/SBC、AAC

 360 RAは、360度・全球方向の位置情報を音源に付加しておくことで、自宅でも臨場感ある音を聴けるようにする技術。例えばライブハウスで収録した音源の場合、演奏の音は前方から、聴衆の足踏みは下方から、といった位置情報を付けておくと、対応機器での再生時に立体的に聞こえる。

 スマホと対応ヘッドホンの組み合わせで360 RAを再生することは既にできていたが、SRS-RA5000、および下位機種の「SRS-RA3000」によって、ヘッドホンを使わずに複数人で楽しめるようになった。

 SRS-RA5000は高さが329ミリメートルあり、一体型スピーカーとしては大型。6つのスピーカーとサブウーファー1つが入っている。設置場所を決めて、環境測定ボタンを長押しすると、スピーカーから電子音が出て設置場所の音響をチェックし、約15秒で最適化する。

SRS-RA5000の「ここは及第点!」

一体型スピーカーとしても高音質
一体型スピーカーとしても高音質
スピーカー6台とサブウーファーを内蔵

 しかし、ここから意外に手間がかかった。まず専用のスマホアプリ「Music Center」で、本体を家庭のWi-Fiに接続。次に、利用するサービスやアカウントなどを登録する。360 RA用の音源を聞くには「Amazon Music HD」(月額980円・税込み)か「nugs.net」(月額24・99ドル)に加入する必要がある。このほか、GoogleのChromecast機能で再生する場合はGoogleアカウントの登録も必要だ。

 初期設定さえ済めば、あとはスマホの「Amazon Music」アプリで360 RA対応曲を選び、再生(キャスト)するだけでSRS-RA5000から音が出る。洋楽(ブリトニー・スピアーズの『Toxic』)を流してみたところ、スピーカー本体より少し上の位置に立体的な音空間を感じる。スピーカーが無いはずの空間に歌声や楽器の存在を知覚するのだ。面白いことに部屋を歩き回っても聞こえ方が変わらない。浮遊感ある音とでも呼ぶべきか、従来の評価軸では言い表しづらい、不思議なリスニング体験だ。

 SRS-RA5000の音響設計を担当したソニー V&S商品技術1部の関英木氏は、「部屋を音で満たす『ルームフィリング』とも呼ぶべき音響を狙っている。2チャンネルのスピーカーで聴く定位感を想像すると、違和感を覚えるかもしれない」と解説する。

SRS-RA5000の「ここは良い!」

空間を感じられる立体音響
空間を感じられる立体音響
スピーカーの上方に高さある音空間を感じた(左)。狭い部屋では自分自身が音空間に包まれる(右)
普通の音源も立体音響風にできる
普通の音源も立体音響風にできる
ボタンを押すと「Immersive AE」が有効になる(左)。2D音源を立体音響風に変換している時は白く光る(右)

 ここまでは約30畳のリビングで試していたが、狭い部屋ではどうか。関氏は「25〜30畳程度の空間を想定しているが、狭い部屋でも対応可能」と言うので、音の反射が大きい約4畳の子供部屋でも試した。リビングでは高さのあるサウンド空間を前方に感じたが、狭い部屋では自分が音空間の真っただ中にいるような没入感があった。

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