一見魅力的な製品だが、果たして買って大丈夫といえるのか。製品チェックに秀でた識者が良しあしを一刀両断する。今回は、スチームオーブンレンジ「ヘルシオ」の最上位製品を試した。
※日経トレンディ2020年9月号の記事を再構成
シャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」シリーズは、現在、広く普及している過熱水蒸気によるスチーム調理を一般家庭に普及させた立役者だ。2004年に初代モデルを発売して以降、電子レンジ機能なども加えて進化し、累計250万台以上を販売する人気シリーズとなっている。ヘルシオはほぼ毎年新モデルを出しているが、20年6月に発売された最新モデル「ヘルシオ AX-XA10」は、操作パネルの配置を一新するなど、かなり意欲的に見える。その実力を試すべく、実際に多くのメニューを調理してテストした。
●重さ/25kg
●庫内容量/30L(2段調理)
●レンジ出力/最大1000W相当
●オーブン温度調節範囲/100~250度、300度、スチーム発酵・発酵(20、35、40、45度)
●メニュー数/338種類(自動メニュー382種類)
●搭載センサー/赤外線、絶対湿度、温度センサー
●定格消費電力/1460W(レンジ)、1410W(オーブン、グリル)
といっても、電子レンジやオーブン、スチームオーブンの機能を単体で使う際の能力は、この1~2年で劇的に向上してはいない。また、国内主要メーカーのオーブンレンジ上位機は、100種類以上のレシピを内蔵するのが当たり前。画面のレシピ通りに下ごしらえさえすれば、ワンタッチで調理ができる。しかしこれも、レシピ通りに作っておいしい料理ができるのは当たり前で、各社の違いが出にくいといえる。
そんな中で、最新鋭のスチームオーブンレンジで重要なトレンドとなっているのが、レシピを見なくてもあり合わせの食材でそれなりの料理ができる、自動調理系の機能だ。そこで、まずAX-XA10の自動調理機能である「まかせて調理」と「らくチン1品」機能からテストすることにした。
「まかせて調理」は15年発売モデルからヘルシオが搭載する機能。例えば、肉と野菜、冷凍のエビを角皿に載せて、「網焼き・揚げる」「焼く」「炒める」「蒸す・ゆでる」からメニューを選べば同時に加熱できる。庫内に赤外線センサーなどを配置し、過熱水蒸気を温度の低い食材から重点的に加熱することで、食材の量や温度がばらばらでも同時に仕上がる仕組みだ。
電子レンジで2品を同時に温める機能はもはや珍しくないが、スチームオーブンで複数の食材を同時に調理できる製品はまだ他メーカーに無く、ヘルシオの大きな優位点だ。ただし従来モデルでは、この機能をスタートさせると庫内を20分前後独占してしまい、他の調理ができない問題があった。家族全員分の調理を一度にできるならよいのだが、我が家は5人家族ということもあり2品以上は難しかった。
その点AX-XA10は、おまかせ調理の利用時に下段でも調理が可能になるというので期待していた。これは、過熱水蒸気を発生させる部品(ヘルシオエンジン)に、過熱水蒸気の流れを仕切るスイングダンパーを追加することで実現している。具体的には、調理開始時にダンパーを閉じて角皿上段の食材を集中加熱し、上段の仕上がりを見ながらダンパーを開いて下段も加熱するといった制御をする。これにより、上段で「網焼き・揚げる」か「焼く」の調理をしながら、下段でも総菜の温めだけでなく、温野菜などを作れるようになった。
実際に使ってみたが、確かに上段で4枚のチキンステーキを焼きつつ、下段で温野菜を調理できた。4~8人分の料理を2種類、一度にできるのはうれしい。試す前に気になっていたのは下段の料理の出来。上段からの蒸気で少しべちゃべちゃするのではないかと懸念していたが、そういった失敗は起きなかった。火力の違いにより、下段で生の肉や魚、冷凍食品の調理はできないが、高く評価したい機能だ。
ヘルシオ AX-XA10の「ここは良い!」
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