デジタル化が遅れていたアパレル業界でも、少しずつDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せている。その手法の1つが「ダイナミックプライシング」の導入だ。長年アパレル業界で問題視されている、在庫超過の問題を解決する可能性を秘めている。

ダイナミックプライシングは、アパレル業界を救う1つの鍵となるだろう(写真/Shutterstock)
ダイナミックプライシングは、アパレル業界を救う1つの鍵となるだろう(写真/Shutterstock)

前回(第4回)はこちら

 新型コロナウイルスの感染拡大で3密回避のために物理的接触を減らすことが求められている中、遅れていた分野のDXが急速に進み始めた。政府も社会全体のDXを加速する好機とし、データ利活用などを進めていく方針を発表。このDXによって生活者の行動スタイルはどう変わり、企業側の打ち手はどう変わるのか。流通、医療、教育、アパレル、スポーツなど各分野のデジタル活用の先端動向を紹介する。第5回はアパレル分野にスポットを当てる。

 アパレル業界では長年にわたって在庫の超過が問題視されてきた。特に近年は「異常気象や環境変化によって、在庫管理が特に難しくなっている」(ディノス・セシールマーケティング本部セシールマーケティング部部長の藤田満氏)という。その問題をデジタルで解決する1つの手法が「ダイナミックプライシング」の導入だ。

 ダイナミックプライシングは、需要と供給に応じて価格を変動させること(関連記事:「成功するダイナミックプライシング」)。スポーツ観戦やコンサートのチケット、ホテルの室料、航空運賃まで幅広い業界で導入が進みつつある。ただ、これらのサービスはキャパシティーの上限が決まっているのが特徴。一方で流行に左右されやすく、商品点数の多いアパレル業界ではあまり導入が進んでいなかった。

 そんな中、企業のデータ活用支援を手がけるブレインパッドは2020年5月、カタログ通販大手のディノス・セシール(東京・中野)が運営する通販ブランド「セシール」のECサイトに導入したダイナミックプライシングのソリューションが、売り上げや利益の改善に一定の効果を上げたことを発表した。これらは新型コロナウイルス感染症拡大前から開発が進んでいたというが、コロナ禍でビジネス的に厳しい状況に追い込まれているアパレル業界で同様の動きが加速する可能性は高いだろう。実際、ブレインパッドには少しずつ問い合わせが増えているという。

長年の「衣服ロス」問題をテクノロジーで解決

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
この記事をいいね!する