
新型コロナウイルスの感染拡大で厳しい外出制限が続いた米国。その影響を受け、デジタル活用が最も進んだのは、食料品や飲み物などの「グローサリー」分野だ。背景には「BOPIS」(Buy Online Pick-up Instore、ボピス)という新施策を多くの流通が相次いで導入したことがある。消費者への利便性と業務効率化を両立し、アフターコロナ時代の「成長の切り札」とも期待されるBOPISの威力を考察してみよう。
新型コロナ騒動以前、米グローサリー業界のオンライン化は他業界に比べて圧倒的に遅れていた。実際、2019年のグローサリー業界全体の売上高に占めるオンラインチャネルでの売り上げは、たったの2%だった(米eMarketer調査による)。
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18年から19年にかけて、この比率は20%増えたものの、「店内で実際の商品を見ながら買う」という従来型の購買行動がまだ主流だった。オンライン活用が一気に増えたのは、最近であり、理由はいうまでもなく、コロナ禍による感染への恐怖と外出制限の影響である。
日本でグローサリーのオンライン購入といえば、商品を自宅まで運んでくれるデリバリーが中心。それ以外のオプション、例えばロッカーでの受け取りなどは、ロッカーの設置数が少ないため、利用しにくい。
米国でも商品のデリバリーを希望する消費者は増えたが、今回のコロナ禍で一気に増えたニーズは、事業者のデリバリーの“能力”を超えるものがあった。
例えば、米アマゾン・ドット・コムでグローサリー商品を購入してデリバリーを依頼しようとすると、配達日が1週間後でも受け付けられないケースが頻発した。
アマゾンは、この課題を解決しようと3月に10万人、4月に7万5000人のスタッフを新規雇用して配達能力の増強を進めたが、需要の急増で対応しきれなかった。そこでアマゾンなど流通大手が臨時の解決策の1つとして実施したのが、既存店舗の「ダークストア」化だった。
「Amazon」やクローガーも「ダークストア」に
これは店舗を商品の受け取り専用にする施策であり、消費者は店舗内に入ることはできない。店員は店内にいて、商品をピックアップしたり、袋に詰めたり、顧客や配達スタッフに渡したりする仕事に特化するものだ。
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