
新型コロナウイルス感染拡大で、多くの店舗は2カ月前後の休業を強いられた。外出自粛の中で広がったのは、Zoomを使い距離を超えて顧客とつながる「オンライン接客」。メルマガやLINEに続く顧客と深くつながるためのツールとして、購買の「あと一押し」にも効果のあることが見えてきた。
渋谷から一駅先の池尻大橋。首都高の高架橋が架かる大きな道から1本奥に入ると、風景は少し落ち着いた住宅街になる。しばらく歩くと、和風の引き戸が付いた店がある。スエットのようなはき心地のジーンズ、雨や汚れをはじいてくれるパーカー、通気性の良い網戸のようなジャケット。そんな特徴のある商品をそろえるブランド「ALL YOURS(オールユアーズ)」の直営店だ。
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創業は2015年。同年12月にクラウドファンディングで水をはじくパーカーを出品。その後、24カ月連続で新アイデアの製品を紹介し、出資を募ってきた。クラウドファンディング「CAMPFIRE」での調達価格は総額で約5800万円に達している。
商品情報だけの話はしない
重視してきたのは、クラウドファンディングの出資者や商品を買ってくれた人たちとのつながりの構築だ。オールユアーズ(東京・世田谷)代表の木村昌史氏はそうした顧客を“仲間”と呼ぶ。「僕らについて話してくれるTwitterの投稿が月に600件ほどある。それに『ありがとうございます。こちらもお薦めですよ』と丁寧にリアクションする。誕生日もおめでとうございますと返す」と木村氏。一見地味な取り組みを続ける理由は「ツイートが返ってきたらうれしいと感じてもらえる。また次も僕らについて投稿しようと考えてくれる」(木村氏)からだ。
売るための宣伝ではなく、仲間としてフラットな関係を築く。その考え方の延長として20年4月上旬に開始したのがZoomを使ったオンライン接客だ。「お仕事ではスーツですか、ビジネスカジュアルですか」「お子さんはいらっしゃいますか」「普段は大きめに着ていますか」。5分ほどのアイスブレークの後は、服にまつわるライフスタイルについてのヒアリングを重視する。商品の情報を伝えるだけの話はしない、というのは木村氏が貫いているポリシーだ。
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