
顧客とのつながりを深め、ファンを醸成する。これまでメルマガやLINEの公式アカウントが担ってきたマーケティングツールの新たな選択肢として浮上してきたのが、オンライン会議システムの「Zoom」だ。セミナーやファンミーティング、オンライン接客など、先行企業の取り組みを追った。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、急成長したサービスといえば米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのオンライン会議システム「Zoom」だ。従来は企業向けの会議システムにすぎなかったが、「Zoom飲み」という言葉が生まれるなど、一般消費者にも浸透した。ファンミーティングやオンライン接客など、企業にとってもZoomは顧客コミュニケーションの手段として広がりつつある。果たしてZoomは新たなマーケティングプラットフォームとして定着するのか。先行企業の事例から、その潜在力を探る。
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1日当たりの会議参加数は3億人
「新型コロナウイルスの感染拡大以降、増え方が格段に違う。20年初頭は新規の顧客企業は前年の倍程度だったが、それが新型コロナ以降は20倍に増えた」
こう明かすのは、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの日本法人ZVC JAPAN(東京・千代田)の佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーだ。19年12月には1000万人だった全世界における1日当たりの会議参加者数は、20年3月に1億人、同4月には3億人に達した。
オンライン会議だけでなく「ショールームや店舗を持っている企業から、オンライン接客にZoomを使いたいといった引き合いがすごく増えている。また既存顧客との関係構築のため、ファンマーケティングに使いたいという要望も増えている」(佐賀氏)。
これはズーム側にとっても想定外のことだった。「これまで、Zoomがマーケティング活用されることは予想していなかった。半歩譲って、イベントや展示会などBtoB(企業間取引)のマーケティングへの活用は想像できたかもしれない。だが、BtoC(消費者向け)のマーケティング活用は全くの想定外」と佐賀氏は驚きを隠さない。ユーザー主導で、これまでにない新しい活用法が進んでいる。
これまで登場してきた各社のZoomマーケティングに関する取り組みを大きく分けると、ファンミーティングやセミナーのような「ファン醸成」、店舗での応対を代替する「接客」、新たな製品やサービスを生み出す「需要創出」の3つだ。ここでは「ファン醸成」の取り組みから紹介していこう。
Zoomはシニア世代も抵抗なし
Web広告は製品やサービスに興味を持たせ、潜在ファンを生み出すマーケ手段として当たり前に使われている。Zoomという新しいコミュニケーション手段を取り込むことで、その役割を進化させようとする動きが出てきた。約35万人が利用するシニア向けコミュニティー「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」を運営するオースタンス(東京・新宿)は、これまでは主にサイト上の広告から趣味人倶楽部の収益を得てきた。今後はZoomを使ったオンラインイベントを開催し、外部企業からの協賛を受ける事業を加速させる。
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