新型コロナウイルスに対応し最前線で奮闘しているのが医療従事者である。米国では彼ら彼女らを支援するため、非接触かつ遠隔から、患者の診断や状態の確認ができるデバイスやサービスの導入が急速に進んだ。ニューノーマル(新常態)の生活に向けて、非接触技術の導入に加えて、患者や新型コロナの感染状況のビッグデータを分析し、先回りする取り組みも始まった。

(写真/shutterstock)
(写真/shutterstock)

 新型コロナウイルスの感染拡大で最も大きなリスクにさらされているのは病院などで働く医療従事者である。特効薬やワクチンが開発されていない状態で、医療用のマスクや防護服の供給も十分でない。実際には感染していない人も押し寄せて、現場の混乱に拍車をかけている。

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 こうした状況に対し、テクノロジーやネットワークを活用して解決を図る動きが活発になっている。医療従事者だけでなく、患者も早期に病気を判定できるメリットがある。収集したビッグデータを活用すれば、感染拡大地域の予測などによって行政や医療機関が先回りで対処できるようになる。

キンサのスマート体温計とスマホアプリ
キンサのスマート体温計とスマホアプリ

 新型コロナの感染拡大の予兆をできるだけ早く捉えることができないか。米サンフランシスコのスタートアップのキンサ(Kinsa)はスマート体温計から集まってくるビッグデータを解析することで、それに取り組んでいる。

 もともとキンサはスマート体温計のデータを利用して、インフルエンザウイルスの感染拡大を予測してきた。異常に高い体温の利用者が急増すれば、そのエリアでインフルエンザの流行する可能性があると予測する。日本などでもインフルエンザ薬の病院での処方箋をベースに予測する取り組みがある。これに対してキンサの手法だと、病院にかかる前の早いタイミングでキャッチできるという利点がある。

 キンサはインフルエンザで構築していたこうしたアラートのシステムを利用し、オレゴン州立大学の研究者とともに新型コロナの予測に乗り出した。手法はこうだ。同社はこれまで蓄積したビッグデータと、それの予測分析で体温とインフルエンザの関係は把握できている。一方、2020年3月以降はそうした従来の予測から外れた事象が激増していた。それを新型コロナの影響を含む「異常」として把握することにした。インフルエンザの感染拡大傾向をDisease Transmission Rate(Rt)と呼ぶ指標で把握しており、新型コロナを含む感染拡大は異常Rtと定義した。

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