SDGs 廃棄物から価値を生む

「おやさいクレヨン」は、米ぬかから採れた米油とライスワックスをベースに、野菜や果物を混ぜ込んだクレヨンだ。2014年に第1弾を発売して以来、季節ごとに内容色の異なるセットをリリース。シリーズ累計約12万セットを出荷した大ヒットシリーズとなった。子育て世代、祖父母世代から支持されている。

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米ぬかから採れた米油とライスワックスをベースに、廃棄野菜で作ったクレヨン。青森県のmizuiroが発売し、原材料となる野菜や果物には青森県産の素材を約8割使用している(時期によって変動あり)。価格は2200円(税込み、以下同)で、パッケージには青森県の「岩木山」を描いた
米ぬかから採れた米油とライスワックスをベースに、廃棄野菜で作ったクレヨン。青森県のmizuiroが発売し、原材料となる野菜や果物には青森県産の素材を約8割使用している(時期によって変動あり)。価格は2200円(税込み、以下同)で、パッケージには青森県の「岩木山」を描いた

 「おやさいクレヨン」を企画、販売するのはデザイン会社mizuiro(青森市)。地域の資源や未利用資源を活用する方法を考え、再利用を目的とした商品企画・デザインを手掛けている。おやさいクレヨンの発色は、石油を原料にした一般的なクレヨンに比べるとややくすんでいるが、それが自然素材ならではのナチュラルな魅力につながっている。

 おやさいクレヨンの原料となる野菜や果物、お米には、できる限り「食べられるのに規格外で廃棄されるもの」「出荷時にカットされる部分」を使用している。色によってはほのかに野菜の香りがして、ざらざらとした書き心地をしている。クレヨンの色の名前も、「りんご」「カシス」「ゆきにんじん」など、原料となった野菜や果物の名前を付けた。

 公式サイトのオンラインショップの他、全国の文具・雑貨店等で購入できる。

現在の通年販売商品「おやさいクレヨン standard」では10色(きゃべつ、ねぎ、ながいも、ごぼう、とうもろこし、ゆきにんじん、りんご、カシス、むらさきいも、たけすみ)を用意
現在の通年販売商品「おやさいクレヨン standard」では10色(きゃべつ、ねぎ、ながいも、ごぼう、とうもろこし、ゆきにんじん、りんご、カシス、むらさきいも、たけすみ)を用意
姉妹品として、米油とライスワックスが主成分で無機顔料と有機顔料で着色した「おこめのクレヨン」(2750円)、花のパウダーを配合して作った「おはなのクレヨン」(1320円)もある
姉妹品として、米油とライスワックスが主成分で無機顔料と有機顔料で着色した「おこめのクレヨン」(2750円)、花のパウダーを配合して作った「おはなのクレヨン」(1320円)もある

 日本を含めた先進国では、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」の問題が深刻だ。例えば、農林水産省および環境省によると、日本では年間2550万トンの食品廃棄物等が出ており(2017年度推計値)、このうち食品ロスは約612万トン(同)あるとされている。

 mizuiroのある青森県は、年間約11万トンの野菜を収穫している全国有数の農業県でもある。おやさいクレヨンでは、地元・青森の廃棄野菜を使用しながら、こうした問題にもアプローチしている。その取り組みはSDGs(持続可能な開発計画)にも合致したものだ。

クレヨンに自然の色を入れる苦労

 mizuiroの代表取締役でありデザイナーの木村尚子氏が、おやさいクレヨンのアイデアを思い付いたのは12年の冬。植物の「藍」を用いた染め物「藍染め」の展覧会を訪れたのがきっかけだった。

 「藍染め展を見ているうちに、『絵を描くための道具にも、自然由来の色を落とし込んだら面白いのでは』とひらめいた。自分には小さい子供がいて、親子で一緒に絵を描くことも多かった。そこで、子供にとって最も身近なお絵描きの道具であるクレヨンと、野菜などを掛け合わせることを思い付いた」(木村氏)

 ターゲットは、20~30代の子育て世代。「自分の子供に使わせたい」と思えるような安心・安全なクレヨンを目指した。

自然の素材のみで作られているため、子供が口に入れても安心だ
自然の素材のみで作られているため、子供が口に入れても安心だ

 しかし、道具であるクレヨンに、まだ食べられる野菜や果物を使用することには抵抗感もあった。そこで思い付いたのが、原料となる野菜や果物を廃棄物に限定することだった。

 早速、青森県のある自治体を訪れ、野菜の生産から加工までを一貫して手掛ける地元の食品加工会社を紹介してもらった。その会社を見学した際、加工時に残渣(ざんさ)が出ることを知った。こうした“もったいない野菜や果物”を再利用すれば、人と地球に優しい、サステナブルなクレヨンを作ることができると考えたのだという。

 クレヨンの作り方自体は、インターネットや書籍で比較的簡単に調べることができた。しかし、実際に野菜を使ってクレヨンを試作してみると、さまざまな苦労があった。