SDGs 廃棄物から価値を生む

「フードテキスタイル」は、廃棄予定の野菜などに含まれる成分から染料を抽出して染めた素材・商品のブランド。従来捨てられてしまっていた、形が不ぞろいなど規格外の食材や、カット野菜の切れ端、コーヒーの出し殻などを、食品関連企業や農園から買い取り、成分を抽出。それを染料にして繊維を染める。

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環境に配慮したエコ素材を実験的に使用し紹介する、サステナブルなシリーズ「converse e.c.lab(イーシーラボ)」のモデル。アッパーにはフードテキスタイルのテキスタイルを採用。今回の2020年秋冬モデルでは、ジュニパー(ハーブ)、パープルキャベッジ(紫キャベツ)の2色を展開。タン裏には染料に使用された材料名をプリント。価格は9000円(税別)
環境に配慮したエコ素材を実験的に使用し紹介する、サステナブルなシリーズ「converse e.c.lab(イーシーラボ)」のモデル。アッパーにはフードテキスタイルのテキスタイルを採用。今回の2020年秋冬モデルでは、ジュニパー(ハーブ)、パープルキャベッジ(紫キャベツ)の2色を展開。タン裏には染料に使用された材料名をプリント。価格は9000円(税別)

 「フードテキスタイル」を展開するのは、繊維専門商社の豊島(名古屋市)だ。これまでに15社以上の国内の食品関連企業、農園と連携し、システムを構築してきた。染色した生地はオリジナル商品に展開するほか、さまざまなファッションブランドと連携して生地販売・商品化を進め、アパレル業界から食品ロス問題に取り組んでいる。

 このプロジェクトがスタートしたのは2015年。「アパレル製品の大きな産地である中国でも年々人件費が高騰する一方で、日本での製品価格は下げ止まったまま。我々のような商社が間に入るメリットはどんどん小さくなっていた」と、豊島八部五課の谷村佳宏氏は当時の状況を振り返る。これまでのビジネスを続けているだけでは生き残れないのではないか。新しいビジネスチャンスを模索し、異業種交流会などにも参加し、業界の垣根を越えて交流を広げていた谷村氏は、キユーピーでCSRに携わっている担当者に出会った。

50の食品から500色

 「当時はまだ食品ロスが世の中に広く知られている問題ではなかったが、話を聞いて自分たちでも何かできないだろうかと色々と考えさせられた。我々が持っているサプライチェーンの中には、天然物を原料にしている染色メーカーもあるので、両者を結び付けることで新しいビジネスモデルができるのではないか」と谷村氏は考えた。一方、いかに意識や志が高くても、ビジネスとして継続できなければ本当の社会貢献にはならない。それにも勝算があった。

 「繊維業界では売れ筋の商品が固定化してしまい、違うメーカーが同じような色や形の商品を出すなど、差異化がしにくくなっているのが現状だ。そうした中で、食品ロス問題の解決という背景を持った独自のカラーを提供する取り組みは、消費者にアピールできる大きなポイントになる」(谷村氏)

 フードテキスタイルの仕組みは次の通りだ。豊島は廃棄予定の食材を買い取り、染色メーカーに染料への加工を委託する。染色メーカーでは食材から成分を抽出して染料を作る。同じ成分でも、酸と反応させるかアルカリと反応させるかなど、処理によって違う色が得られ、現在では50の食品から抽出した500色を保有している。

フードテキスタイルの仕組み
フードテキスタイルの仕組み
原材料を提供するのは食品関連企業や農場など。そこから染料加工、染色、縫製を経て製品になる

 「キャベツから赤とか、トマトから黄色とか、元の食材のイメージとかけ離れた染料が取れる場合もある」と谷村氏は言う。そうした500色の中から、元の食材がイメージしやすい色を選んで、染色した生地としてメーカーに販売している。一方、メーカーから色、原材料、生地の種類、風合いなどの要望があれば、ロットや時間が許す限りは共同開発を行い、ダブルネームのコラボレーション商品として世に出すこともある。

1つの食材から取れる同じ成分でも、処理によって違う色が得られ、現在では50の食品から抽出した500色を保有している
1つの食材から取れる同じ成分でも、処理によって違う色が得られ、現在では50の食品から抽出した500色を保有している

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